アヴォロスは魔神の翼をはためかせながら上空へとゆっくり昇っていく。眼下に広がる戦禍を冷ややかに見下ろしていると、アヴォロスがその身体を沈み込ませている魔神の顔を部分に水溜まりが生まれ、そこから優花が出現する。Motivator
「陛下、そろそろ準備が整ったとのことです」
「……そうか。いよいよだな。カイナビに始動しろと命じろ。余もすぐに向かう」
「はっ!」
水溜まりに消える優花。アヴォロスの視線が真っ直ぐにある場所へと注がれる。
「さあ、余興もそろそろ終わりにしよう」
すると、結界に覆われていた【シャイターン城】がゴゴゴゴゴゴゴと地響きを立てながら微かに揺れ始める。アヴォロスが見ていたのは城だったのだ。
ゆっくりと、だが確実に【シャイターン城】が独りでに動いていく。そのまま大地から離れると、結界の覆われたまま天へと浮き上がっていく。
「何だとっ!?」
その光景を見ていたレオウードがまず叫ぶ。日色の攻撃により、一度は地上に落とされた城が、再び宙を浮かび始めるのだから驚かずにはいられない。
レオウードだけでなく、他の者たちも次々と城を注視し始める。
「くっ! もう復元したというのか!?」
今度はイヴェアム。マリオネとともに、目の前にいるヴァルキリアたちと戦っていたが、あの悍ましい力を宿す城の復活に目を奪われてしまっている。
「どうやら計画は次の段階へと移行するようです」蒼蝿水(FLY
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冷淡に言葉を吐くのはヴァルキリアシリーズであり、イヴェアムとともに暮らしてきたはずの05号である。彼女は他のヴァルキリアたちとともにその場から離れて行く。
「ま、待てキリアッ!」
イヴェアムの叫びも虚しく、05号の足を止めることは叶わず、ヴァルキリアたちは地上に現れた優花の作り出す水溜まりに身体を沈み込ませていく。
05号たちだけではなく、リリィンとシウバを同時に相手をしていたペビンも空飛ぶ城を見て微かに笑みを浮かべる。
「おや、もうそのような時間ですか。仕方ありませんね」
「何を言っている貴様!」
六枚羽を背中に宿し、城と同じように宙に浮かんでいるペビンに対してリリィンが怒鳴るが、ペビンはそのままリリィンとシウバを一瞥すると城へと飛んでいく。
「逃がすものか!」
リリィンもまた背中から黒い翼を生やして追随する。
「おやおや、そういえばあなたも飛べるのでしたね」
ペビンは一つも驚いていない様子で言葉を口にして、一度歩みを止める。
「言っただろ。貴様は絶対許さんと」
「しつこい方ですね。ですがあなたにはもう飽きました」
そう言って後ろ手に組んでいた両手を前に差し出してくる。リリィンは彼の両手に掴まれているものを見てギョッとしたが、すぐにスッと浮遊感が失われて落下していく。
彼の手に握られていたのは黒い翼。リリィンは落下しながらも自分の背中に意識を向ける。何故か翼が八分ほど切り取られた様子を呈していた。北冬虫夏草
「なっ!?」
翼を失ったリリィンは飛行することは無論できない。
「お嬢様ぁぁぁっ!」
落下してくるリリィンをシウバが見事に受け止める。だがリリィンは驚愕したままの表情を、いまだに空中で見下ろしてきているペビンを見る。
「ではこれで、またいずれどこかでお会いできれば」
手を振るとそのまま踵を返して【シャイターン城】へ戻っていく。その間に手に持った翼を投げ捨てると、その翼が粒子状になって消え失せる。
すると驚くことに、リリィンの切り取られた翼が、元の無傷の状態へと戻った。
「お嬢様、これは一体……」
「さあな、ただ奴が別格だということだけはハッキリした」
「まさかお嬢様のように幻術を?」
「いや、ワタシもそう思ったが、感覚的に違った。あの時、間違いなくワタシの翼は奪われていた」
「では何故戻ったのでしょうか?」
リリィンにも答えが見出せないのか、城の結界に入り込んだペビンの後ろ姿を睨みつけながら首を左右に振る。
「とにかくあの城が甦った以上、ここの戦場をさっさと終わらせなければ危険だ」
「ですが、大分数を減らせたとはいえ、まだ多くの敵が残存しています。どうされますか?」levitra
「フン、そのようなもの!」
リリィンが再び戻った翼で空を飛びながら戦場が最も苛烈な場所まで向かう。
「リリィン殿!?」
イヴェアムが突然現れたリリィンに声をかけるが、反応は返さずに静かに目を閉じて大地に立つリリィン。
そんな無防備を晒す彼女に向かって黒衣が突撃してくる。
「危ないっ!」
イヴェアムが助けに向かおうとするが、突如として彼女から放たれた莫大な魔力により足を止めてしまう。まるで津波のように流れ出る魔力が、周囲の者たちを包んでいく。
そして次々と彼女の魔力に触れた者たちが膝を折り倒れていく。だがそれは黒衣や《醜悪な人形アグリィ・ドール》などの敵として認知されている者たちだけ。
「す……凄い……!」
イヴェアムは咄嗟にそのような言葉を漏らす。敵が集まっている中心に向かい、目を閉じて突っ立っているという常軌を逸した行いに、イヴェアムだけでなく、その様子を見た全員がリリィンの正気を疑ったが、彼女から発せられた魔力により敵が倒れたことによって、その畏怖とも感じられる魔法の効果に、誰もが呆気に取られていた。
ほぼすべての敵が倒れた瞬間、クラッと目を閉じたままのリリィンが前のめりに倒れそうになる。そこへシウバが現れ彼女を支えることに成功。K-Y
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リリィンの全身からは信じられないくらい汗が流れ出ており、顔色も青くなっている。常人の何十倍もの魔力を一気に放出したのだから当然こうなることは明白。
しかし彼女のお蔭でアヴォロスと【シャイターン城】に集中することができるようになったのも事実。
「お嬢様……お疲れ様でございました」
慈愛に溢れる笑みを浮かべてシウバは彼女の額の汗をハンカチで拭う。
これを好機と見たイヴェアムは、リリィンの行為を無駄にはできないと悟り、再び【シャイターン城】を落とすべく皆に攻撃の指示を出す。
「いいか! 絶対にあの城を落とすのだっ!」
何故ならあの城には恐ろしい兵器が積み込まれている。《シャイターン砲》。その威力は【ヴィクトリアス】を瞬時に壊滅させるほどのもの。
この戦場に撃たれれば一溜まりもない。是が非でも、あの攻撃を放たせてはならないと、この場にいる全員の心が一つになっている。
だがそこへ最大の障害がやってくる。上空から大きな影。それを見たイヴェアムが悔しげに言葉を吐く。
「……アヴォロス……!」
いつの間にかこの場に舞い戻ってきていた魔神。だが少し気になることもあった。それは魔神の身体からアヴォロスが出て、顔の上に立っているのだ。一体化が解かれている。
そして魔神の開かれていた六つの瞳も、四つまで減っている。するとアヴォロスが魔神の頭から翼を広げて飛び上がり、【シャイターン城】へと入っていく。アヴォロスというコントローラーを失ったせいか、そのままの状態で地面へと落下してくる魔神。
「皆の者ぉっ! 衝撃に備えろっ!」
レオウードが叫ぶ。このまま魔神が落下してくれば、かなりの衝撃が周囲を破壊するのは明らか。全員がその場から離れて防御態勢を取る。
案の定、魔神は落下の衝撃で大地を揺らし巨大なクレーターを生み出す。しかし予測も立てられていたお蔭で、それによる人的被害はさほど見当たらなかった。
魔神はアヴォロスと一体化する前と同じく、眠ったように身体を動かさない。
「一体アヴォロスは何をしようとしてるのだ……?」天天素
イヴェアムの疑問は寂しく風に流れていくだけだった。
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