2015年3月19日星期四

また一歩強くなる

制裁を終え、スッキリした俺は通路から広間へ戻った。
 ちなみにゴラオンはボロ雑巾の様にして放置して来たが、もはやあいつに戦闘をする体力も意志すらも無い。驚異的な回復力も完全に消え、トラウマをしっかりと植え込んでやったので襲われる心配は無いだろう。たとえ回復しても襲えれば……だがな。精力剤

 広間に戻ってすぐに人質にされた貴族を発見した。未だに気絶しているが、確かハルトとメルルーサだったか? 二人以外の反応が無いが、連れていた仲間は犠牲となったのだろう。何にしろ、殺人鬼と遭遇して生き延びたのは運が良かったと言える。
 『サーチ』で調べてみればこちらに向かう数十の反応を捉えたので、おそらくヴィル先生が手配した警備隊に違いない。彼等によって救助されるだろうから、壁際に並べておいた。

 更に倒した三人の様子も確認しておいた。
 金狼とドワーフはすでに事切れていたが、罪悪感など微塵も湧かない。散々人を殺してきたんだ、殺されて当然だしこれも因果応報である。
 人を殺したならば、自分も殺される覚悟を持っておけ……と、前世の弟子達に言ったが、今の弟子達にはまだ言っていない。目の前で堂々と殺したし、近々伝えなければなるまい。
 人族の男だけは生きていたが、こいつは警備隊に連行してもらって色々吐いてもらおう。実はゴラオンだが……拷問をやり過ぎてしまってまともに証言出来るか怪しいのだ。こいつに代わりを務めてもらおうと思う。
 縛る物を探せば男から血染めのロープが見つかったので、大きく弓なりにそらしたポーズで硬く縛っておいた。奴らが遊び道具として使ってた物で自分が縛られるはめになるとは、何て間抜けな話だろうか。

 残りの死体や後の処置は全て丸投げしよう。
 やれる事を終え、俺は弟子達の元へ向かった。

「シリウス様!」
「シリウスさん!」

 弟子達の元へ戻ればエミリアとリースが迎えてくれたが、レウスは意識を失っているようで倒れたままだ。

「血が付いていますよ! どこか怪我をしたんですか?」
「これは奴らの返り血だよ。俺に怪我はないから安心してくれ」
「終ったのですか?」
「ああ、全部終ったぞ。ところでレウスは大丈夫か?」
「先ほどまで起きていたのですが、安心して意識を失っただけです。ここで出来る応急処置は済みましたので、後はゆっくりと休ませれば大丈夫かと」

 レウスに触れて『スキャン』を使えば、罅割れた肋骨が大分修復されていた。短時間かつ少ない魔力でここまでやれるとは、彼女の治療に関する才能は本当に素晴らしい。

「そうか。疲れているところ悪いが急いで迷宮を出よう。リースは歩けるか?」
「大丈夫です、歩くぐらいなら出来ます」
「よし。エミリア、負ぶってあげるからローブを返してくれ」
「……もう少しだけ」
「いやいや、いいから返しなさい。返り血の付いたこの服じゃ帰れないだろうが」
「……はい」

 何でそんな残念そうに返すのか? 走り回って埃とかくっ付いたローブなんて汚いだけだろうに。

 レウスを胸元で抱え、エミリアは『ストリング』で支えながら背負い俺達は歩き出した。俺が来た道から帰ると、こちらに向かっている警備員に鉢合わせするので別の道を選ぶ。

「シリウスさん、貴族のお二人は?」
「もうすぐ警備員の人達が来るから安心しなさい。俺達は見つかる前に逃げるべきだ」
「逃げるって、私たちも保護してもらった方が」
「奴らをどう倒したか説明するのがちょっとね。俺達は殺人鬼と出会い、ボロボロになりながらも逃げた。そして殺人鬼は何者かにやられた……それでいいんだよ」

 殺人鬼を倒したなんて広まれば面倒な事になるのは確実だ。俺達が黙っていれば証拠も無いし、自然と闇に隠れてしまうだろう。
 あ、でも縛った男がいたな。ゴラオンは放っておいても大丈夫だが、あいつが何か余計な事を自供するかもしれない。
 でもまあ……いいか。子供が大人四人相手に勝ったなんて信じられないだろうし、あいつも子供相手に負けたなんてプライドが邪魔して言わないだろう。それでも自供したら白を切ればいい。


 しばらく俺達は無言で歩き続けた。ゆっくりであるがリースは確かな足取りで歩いているし、背中のエミリアが時折俺の後頭部に頬を擦り付けてくるのでくすぐったい。
 そして五階まで戻った所で、リースが申し訳無さそうに口を開いた。

「あの……重くありませんか? 私も少し楽になったので、エミリアに肩を貸すくらいなら出来ますよ」
「そうだな、確かに重い。だがこれは命の重さなんだ。二人が生きている証拠だから、しっかり感じていたいんだ」

 今日は久しぶりに切れてしまった。
 俺が切れた時は相手の命を奪う事であり、すでに慣れてはいるが気分が良いものではない。そんな時に弟子達と触れ合うと落ち着くのだ。こうやって手や背中から弟子達の鼓動を感じると、生きていて良かったと安心できる。
 そしてエミリアよ、感極まったのかは知らんが肩を噛むのを止めなさい。その行動に困っているとリースが裾を引っ張ってきたので振り向けば、思いつめた表情のリースがこちらを見つめていた。

「どうして……どうして、そんなに強くいられるんですか? 人を殺してしまったのに」
「わかったのか?」
「水の精霊が教えてくれたんです。あの狼の人とドワーフの人はもう……助からないって」
「……そうか。人を殺した俺が怖いか?」
「……わからないんです。シリウスさんは私達を守る為に戦ったのに、感謝するべきなのに……どうしたらいいのか」

 引っ張っていた袖を強く握り、リースは酷く葛藤していた。
 掛けるべき言葉を考えていると、エミリアが手を伸ばしてリースの肩に手を置いた。

「ねえリース、深く考える必要は無いの。貴方はシリウス様と一緒なのよ?」
「一緒!? そんなわけ無い! 私は自分や皆が殺されそうになっても、人を殺せない臆病者なんだよ!」

 そして彼女は吐き出すように状況を語った。
 戦うと言いながら、ゴラオンを前に躊躇してしまった事。
 それが原因でエミリアを傷つけてしまった事。
 懺悔するように捲くし立て、彼女は荒い息をついていた。

「だから……私はシリウスさんと一緒なんかじゃない。ただの……臆病者だから」
「だったらリースは何で逃げなかったの? 私達と戦うって何で言ってくれたの?」
「それは、貴方とレウス君が大切で、その……家族みたいだから」
「シリウス様、もし強敵に出会って私達が逃げてほしいと言ったら、どうしますか?」
「逃げるわけないだろう。一緒に戦うに決まっている」媚薬
「ほら一緒。シリウス様はリースの先を歩いているだけで、根本は一緒なんだよ」
「でも……」
「あのなリース、臆病者でいいんだよ。俺は結果的にそうなっただけで、そもそも人を簡単に殺しちゃ困る」

 将来、リースが笑いながら人を殺すようになったら、俺は途方も無くへこむだろう。
 彼女は人を癒して笑顔でいるのが一番似合う女の子だ。俺達の中で一番まともな常識人だし、変わってほしくない。

「俺はあいつらの命よりお前達が大事なだけだ。そしてあいつらは人の命を奪うのを楽しむ殺人鬼だったから、躊躇なく殺しただけに過ぎない。それでも、こんな俺を許せないなら弟子を辞めても構わないぞ。俺に止める権利はないからな」
「それは……嫌……です。皆の隣は居心地が良すぎて離れたく……ない。だけど……またあんな事があったら、私は迷いなく出来るかな……って」

 そうか、俺が怖いとかそうじゃなく、彼女はきっと不甲斐なかった自分が許せないのだ。人を殺しても、迷い無く進む俺が眩しく見えて仕方ないのかもしれない。

「リース、君は俺じゃない。俺の真似をしてもしょうがないんだ。リースにはリースの道がある。そうだろう?」
「っ!? ですが、私はどうすれば?」
「それは俺や他人が決めるものじゃない。だから悩め。他人に相談してもいいが、答えは絶対自分で見つけるんだ。そうすれば後悔しても、真っ直ぐ歩いていける」
「……出来るでしょうか?」
「ああ、リースなら出来るさ。それにお前にはエミリアや俺達がいるんだ。間違っていたら、違うぞっていくらでも言ってやるさ」
「……ありがとう」

 リースは俺の肩に頭を押しつけて静かに涙した。
 本当なら胸とか貸してやるべきだろうが、二人を抱えた状態じゃあ無理だ。早いところ迷宮を出たいところだが、彼女が落ち着くまで待機するしかないか。

「ひりうふふぁま、ふぁふがふぇす!」
「エミリアよ、肩に噛み付きながら喋るのは止めなさい」
「ぐすっ……ふふ、甘えたいんですよ、きっと」

 今度から背負うのをやめよう。いつか肩が食い千切られそうだ。




 ようやく迷宮を出れば、迷宮前は人でごった返していた。
 そのほとんどが武装した警備員で、入口全てに進入禁止のロープが張られ、間違って入らないように数人が見張っていた。
 当然、そんな中で俺達が迷宮から出てくれば目立つ。しかも怪我人を抱えているのだから、一体何事かと思うだろう。

「シリウス君!」

 全員の視線を集める中、人混みからマグナ先生が飛び出し俺の前へやってきた。

「無事ー……ではなさそうですね。状況を説明していただけますか?」
「その前にレウスとエミリアをお願いします。応急処置はしましたが、怪我をしていますので」
「わかりました、すぐに学校の治療室に運びましょう。そこの君、担架を用意してください」

 マグナ先生の指示で持ってきた担架にレウスを乗せ、続いてエミリアも乗せようと背中から降ろそうとするが、彼女は俺の首にしがみついて降りるのを拒否した。

「エミリア、降りなさい」
「もう少しだけ」
「駄目だ。お前は怪我人なんだ、ちゃんとした治療を受けてきなさい」
「でも……」
「聞き分けの悪い子は嫌いだぞ」
「降ります!」
「こら、ゆっくり降りなさい」

 慌てて降りようとするので、頭を揺らさないように降ろすのも一苦労だった。担架に乗せると切なそうな目を向けてきたので、頭を撫でてやりつつ言った。

「後でお見舞いに行くからな。ゆっくり休んでいるんだぞ」
「はい」
「リース、ここは俺が説明するから君も一緒に行ってほしい。君だって疲れているだろう?」
「わかりました。何だかあの子見ていないと不安ですし」

 リースは苦笑しつつ、学校の治療室に運ばれる二人について行った。
 ふう、これで一安心だな。安堵の息を吐きながら二人を見送っていると、マグナ先生が笑いながら隣に立った。

「エミリア君のあんな甘えた表情を見たのは初めてですね」
「見なかった事にしてやってください」
「子供らしくとても良い表情でしたけどね。それで、説明をお願いしてもよろしいですか?」
「わかりました。あの後私はすぐに迷宮へ飛び込み、そして九階へ辿り着いた時に鮮血のドラゴンと出会いました」

 マグナ先生には、戻ってくる前に考えていた嘘の説明をした。
 鮮血のドラゴンに出会ったが、すでに彼等は無力化されていて、九階には激しい戦闘の跡が残っていた。
 調べている内に生きていた弟子達を発見し、怪我の治療の為に急いで戻ってきた……と言う内容だ。

「無力化……ですか。何が起こったのか彼女達は知っているのですか?」
「鮮血のドラゴン達と遭遇し戦ったそうですが、全員やられて気絶してしまったそうです。そして気がついたら無力化されていたと」
「ふむ、原因はわからずですか。警備隊に続いて調査隊も送りますので、その調査待ちですね。他に何か伝えることはありますか?」
「貴族のハルトとメルルーサも無事でしたが、従者の人達は……」
「そう……ですか。二人が無事なのは喜ばしい事なのでしょうが、犠牲となった生徒は非常に残念です。申し訳ありませんが、学校に戻ったらヴィル先生にも報告してもらえませんか? おそらく私の職員室にいる筈です」
「今の話をヴィル先生にすればいいんですね?」
「はい。本当なら私が行きたいところですが、ここの調査がありますので離れられません。ですので、現場を見たシリウス君に直接説明してもらいたいのです」
「わかりました、俺も聞きたい事があるので言ってきます」
「ええ、よろしくお願いします」

 調査隊に指示を飛ばし始めたマグナ先生を背に、俺は弟子達を追う様に学校へ向かって走った。性欲剤


 学校へ戻った俺はすぐにマグナ先生の職員室へ向かった。
 部屋の前に立ちノックしようとするが、する前に扉が開かれヴィル先生が出迎えてくれた。中に招き入れたヴィル先生は自らお茶の準備を始め、ソファーに座る俺の前に置いた。

「マグナ先生程ではありませんが、私も少しは嗜んでいるのですよ。どうでしょうか?」

 少し蒸らしが足りないが、茶葉の味が染み込んでいて美味しかった。それに色々あって喉が渇いていたから丁度良かった。

「……はい、美味しいですよ。それで、私がここへ来たのは迷宮で起こった事の説明ですね?」
「よろしくお願いします」

 それからマグナ先生に話した内容をヴィル先生にも話した。
 だが彼に対してはレウスとエミリアの傷や、鮮血のドラゴン達の生き残りについて詳しく説明しておいた。
 一通り説明を終えると、ヴィル先生はこちらが何か言う前に頭を下げてきたのだ。

「まずは謝罪をしましょう。先ほど調べた結果、今回の殺人鬼達を手引きしたのはグレゴリと判明しました。我々、学校の先生によって貴方の弟子達を傷つけてしまい、大変申し訳ない」
「……そのグレゴリはどこへ?」
「学校に姿は無く、すでに彼の家にも警備隊を送っております。捕まるのも時間の問題ですので、私達にお任せください」
「任せて……いいんですね?」
「この様な事を仕出かしましたが、腐っても上位貴族なのです。貴方が下手に手を出せば庇いきれない可能性もあるので……堪えてください」
「わかりました」

 終ったらすぐにでもグレゴリの職員室へ突撃しようと思っていたが、そこまで言われたら仕方あるまい。手を下すのはやめておこう。
 初めてみるヴィル先生の怒りの表情も、俺が止めようと思った一つの要因だ。

「我々も限界を超えました。その生き延びた鮮血のドラゴンの二人を尋問し、グレゴリを吊るし上げる証拠を得ねばなりません。彼はもはや先生ではなく犯罪者ですから」

 偉そうに先生していた人が、僅か一日で犯罪者へ転落か。獣人は愚かとか呟いていた本人が一番愚かだったな。

「説明ありがとうございました。何かありましたら報告しますので、今日はこの辺にしておきましょう」
「はい。弟子達の様子が気になりますので助かります」
「本当に大切にしているのですね」
「そうですね、大事な俺の弟子ですから」

 軽く笑みを向けて俺は職員室から退室した。


 治療室へ顔を出したが、エミリアとレウスはすでに処置を終えて各病室のベッドに運ばれたそうなので、俺は教えてもらった扉をノックした。

「はーい……あ、シリウスさん」

 扉を開けてくれたのはリースで、俺の姿を確認するなり笑顔を向けてくれた。

「様子を見に来たんだが、入って大丈夫かな?」
「はい、大丈夫ですよ。エミリア、シリウスさんが来たよ」
「本当ですか!?」

 声質からして、エミリアはほとんど回復したようだ。俺が部屋に入ると、ベッドに座ったエミリアが満面の笑みで迎えてくれた。

「調子はどうだ?」
「まだ少し頭がふわふわしていますが、もう大丈夫です」
「そうか。だがそういう油断が一番危ないからな、今日は大人しくここで休むんだぞ」
「そんな! 本日のダイア荘の掃除も終ってませんし、晩御飯の支度もまだー……」

 エミリアがこの世の終りみたいな顔をしているが、頭を撫でてやると少しだけ表情を和らげた。

「掃除も晩御飯も明日には出来るから、今は休みなさい。それとも……命令しないと駄目なのか?」
「……はい、わかりました」

 渋々と言った表情だがエミリアは納得してくれた。その光景を苦笑しながら眺めていたリースは、ドアを開けて部屋を出ようとしていた。

「私、レウス君を見てきますね」

 ごゆっくり……と言わんばかりの笑みでリースは部屋を出て行った。全く、空気を読むのは結構だが最後の笑みはいらんよ。女性用媚薬
 俺とエミリアは二人きりになり、すでに夕方近くなので周囲も人通りが少ない。俺はエミリアの顔を覗き込みつつもう一度頭を撫でた。

「さて……リースは行ったぞ。言いたい事があるんじゃないか?」
「…………シリウス様ぁ!」

 彼女は唐突に表情を歪ませると、俺にタックルする勢いで胸元に飛び込んできた。無理に動くなと言っているのに、仕方がない子だ。

「怖かった……怖かったです! レウスが……まるでお母さんにみたいに前に出て……また、大切な人が居なくなっちゃうって思って……ああぁぁぁ!」

 エミリアが異常に甘えていたのは、この感情を表に出さないように誤魔化していただけなのだ。
 目の前で親を失った光景は、彼女にとって未だに癒えない深い傷である。
 今回それを思い出させる状況になってしまったが、彼女は泣き叫びたくても生き延びる為に必死に耐えていた。
 レウスとリースの前で弱い自分を見せないように我慢し続け、そしてついに二人きりになったところで瓦解したのだ。

「私、シリウス様に二度と会えないと思って……でも二人を支えなきゃって! レウスが無事で良かった! リースが無事で良かった! シリウス様に……また撫でてもらえて……よかったぁ……」

 感情がだだ漏れで放つ彼女の言葉は支離滅裂だ。だがそれでいい。トラウマを刺激されようと、耐え続けた彼女の感情をしっかり受け止めてやらないとな。
 エミリアを包み込むように抱きしめ、ゆっくりと慈しむように撫でてやる。

「よく頑張ったな。二人が無事に済んだのは、エミリアが支えてくれたからだぞ」
「でも私! ずっと倒れてて! レウスが必死に戦うのを見ている事しか出来なくて!」
「それは最初に言ったようにリースを守ったからだろう? こうして皆、無事に帰って来れて俺は嬉しい」
「シリウスさまぁ……私も……です」

 数年前、エミリアの信頼を得た時の夜を思い出す。あの時彼女はただ泣きじゃくり、俺は宥めていただけだった。
 だが今は違う。
 彼女は一頻り泣いた後、涙を拭って俺を見上げてきたのだ。

「今度は……今度こそは……私が守ります。どんな事が起きても跳ね除けるように……強くなります」
「俺の従者をやりつつか? 今まで以上に大変だぞ」
「大変でも私は頑張ります。だって、何も出来ず見ているだけなんて耐えられませんから」

 ……また成長したなエミリア。その力強い眼差しがあればきっと強くなれる。将来が楽しみだ。

「よく言ったエミリア。師匠として嬉しいぞ」
「本当ですか? でしたら、一つお願いがあるんですが」
「何だ? 言ってみなさい」
「もう少しだけ……このままでいいですか?」
「仕方ないな」

 彼女の要望に答え抱きしめたままでいると、彼女は安心した表情で俺に擦り寄ってくる。
 しばらく経つと彼女は穏やかな寝息を立て始めたのでベッドに寝かしつけてやり、俺は静かに部屋を出るのだった。


「あ、シリウスさん。エミリアはどうでしたか?」

 部屋を出てすぐに、レウスの元へ行っていたリースが戻ってきた。手には外で摘んできたと思われる花を持っていて、おそらく見舞い用だろう。

「ああ、彼女はもう大丈夫だ。今は落ち着いてゆっくり寝ているよ」
「良かった。レウスも先ほど目覚めましたし、今から向かえば話が出来ますよ」
「そうだな、俺も少し話をしておこうか。ところでレウスの事を君付けで呼ばないんだな?」
「先程レウスの方から他人行儀で嫌と言われまして。私の方も切っ掛けが掴めなくて、ずっと君付けで呼んでいただけなんです。ですから、今日を切っ掛けに呼び捨てにしようと」
「それだけレウスが心を許したんだ。あいつは敵以外には人懐こそうに話すけど、心から懐いているのは数人しかいないんだ。君はその一人になったんだよ」

 レウスが心から懐いているのは、俺とエミリア、そしてノエルとディーくらいだろうな。そこへ新たにリースが加わったわけだ。
 その話を聞いたリースは笑みを浮かべて嬉しそうにしていた。中絶薬

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