2015年3月16日星期一

討伐相手を選ぶらしい

ギルドの掲示板には、いつも依頼を書いた紙がこれでもかと言うくらい貼り付けてある。
 ただ、そこに貼られている依頼は、酷く簡単であるか、もしくは依頼の成功失敗を問わない、適当な代物が多いことを知る者は少ない。
 本当に重要な依頼や、難しい依頼を不特定多数の冒険者の目に晒しても、良いことは無いからだ。
 そう言った物は、ギルドが目をつけた、それなりに実力の有る冒険者達にこっそりと回されるものなのだ。
 当然、そう言った依頼は完遂すれば、得られる名声やら報酬は、掲示板に貼られているような依頼とは比べ物にならない。
 とは言っても、そう言った依頼が常に存在しているわけでもないのだが。
 結局、蓮弥はリアリスからの依頼を受けることにした。
 シオン達に相談もしてみたのだが、シオンもローナも詳細は言えないが、色々と忙しく同行はできない、と言う返事だった。
 先日のエルフの国からもたらされた情報により、蓮弥がほぼ壊滅させた森に有る樹林迷宮の出入り口には常時監視の目が付き、近くには急ピッチでそこそこの規模の砦の建設が始まっている。
 兵士も常駐することとなっており、守備隊の編成が急ぎ、行われていると言う噂だ。
 流石に、エルフの国を襲ったような規模の魔物の集団を撃退できるような守備隊など置けるわけもなく、砦は守備力を重視し、非常時には即時逃げ出せるような脱出口がいくつか備え付けられるらしい。
 その関係で、ローナが忙しいのは蓮弥にもなんとなく理解ができる。
 一応僧侶を名乗っているローナであるが、実態は騎士だ。
 最前線に近いククリカの街において、一応は軍事の専門家とも言える。
 そちら方面で引っ張られているのだとしても、別段おかしいことはない。
 反対におかしいのはシオンが忙しいと言うことだった。
 忙しい理由に関して見当がつかないのだ。
 戦力として考えても、一介の剣士であり、なおかつ蓮弥と比べた場合に格段に落ちる実力しか持ち合わせてはいない。新一粒神 蔵八宝 VIVID
 守備隊関係で呼び出されているとは考えにくい。
 考えにくいが、であればなんだと問われると答える術が無い。
 何か問題があれば、そのうち話をしてくる可能性もあるかもしれない、くらいの所で蓮弥はそれについて考えることを止めている。

 「良い、依頼、無いです、ね?」

 掲示板を眺めていたクロワールが言う。
 蓮弥はクロワールを自分が出かける時には可能な限り同行させるようにしていた。
 リアリスがクロワールを見た時の反応からも分かるように、人族はとにかくエルフを見ると驚く。
 これは物珍しさからくる反応なわけだったが、それならば、珍しくない程度に姿を見られるようにしてやれば、一々驚かれることもなくなるだろうと言うのが蓮弥の考えだ。
 しかし、クロワール一人をあちこちにふらつかせるわけにもいかない。
 珍しいと言うのは、希少価値があると言い換えることも出来る。
 ククリカの街の治安状況がどの程度良好なものなのか蓮弥は知らないが、人攫いの類がいないとは言い切れない。
 そしてもしそんな犯罪者達がクロワールの存在を知った場合、一山当てようとクロワールを危険な目にあわせるようなことがあるかもしれない。
 であれば、蓮弥自身がクロワールのガードに当たれるように、自分と一緒に行動させる以外ない。

 「そりゃ、手頃な依頼が適当にごろごろしてるわけもないからなぁ」

 蓮弥がリアリスの依頼を受けることにした理由は一つある。
 それはリアリスが蓮弥に提示した報酬にあった。
 学校の教師になる前は、普通に冒険者として依頼をこなしたりしていたリアリスは、その頃に集めたものと自分の持つ現金ならば、どれでも蓮弥に譲り渡すことを提示したのだ。
 その集めたものに関しては、リアリスは几帳面な性格をしているのか、全てリストアップされていた。
 こんなものがありますよ、とリアリスは持参してきたそのリストを蓮弥に渡したのだが、そのリストを目にした蓮弥は一つ気になる記述を見つけていたのだ。
 それはこう書かれていた。

 <金属製の小箱、色は黒、形は歪で奇妙な装飾が施されている。中身は球状に見える多面体で不揃いな大きさの面を数多く備えている。色は漆黒で赤い線が所々にあり。多面体は金属製らしい帯と七本の支柱によってはこの中に吊り下げられている。用途不明>

 いやまさかね、と言うのが正直な蓮弥の感想だった。
 その記述に該当するものは、何故か知らないが蓮弥の知識の中に一つだけあった。
 見つめることで、異界の光景が心に浮かび上がり、呼んではいけないものを召喚してしまう、アレである。
 しかしこれは元の世界の知識であり、異世界に同じものがあるとは考えにくい。
 それでも、あまりにも似すぎている。
 仮に、違うものならば何の問題も無い。
 だがもし、蓮弥の知識の中にあるものと同じものなのだとしたら。
 一介の冒険者の手にあるには、非常に危険な代物である。
 だからといって、自分の手の中にあれば安全だとも言えないが、少なくともそれがなんであるのか分かっている分、取り扱いに関しては間違いが起きづらいはずだ。
 蓮弥はあまり不自然にならないように、多少の金品と、どうやら魔術工芸品らしいいくつかの品、それとその金属製の小箱を報酬として貰い受けることを条件に、リアリスに依頼を引き受けると告げたのだ。
 もちろん、首尾よく小箱を手に入れた場合、フラウと相談して絶対に人の手が触れないように封印するつもりだ。

 「それにしても、どれくらいの仕事をこなしたらリアリスのご期待に沿えるんだか、そこが良く分からないんだなぁ」

 「冒険者、として、成功した、と、言える、くらいの、お仕事?」

 「まさか、オークの巣辺りに放り込んで、オーク100匹斬りしてきましたーと言った所で笑い話にしかなりそうにないしなぁ……」

 オーク100匹斬りの単語だけ見ると、別な意味に取られるかもしれないしな、とも蓮弥は思う。
 その場合、名声とか実績云々の以前の話になってしまう。

 「基本的に、リアリス、さんに、やらせるの、ですか?」

 「いや、それは無理だろうけど、ある程度は自分で戦ってもらわないと実績ですって言い切れないだろ」

 蓮弥が探して、蓮弥が斬って、リアリスがやりました、と言う話に持っていても、蓮弥自身は全く構わないのだが、何もしていない本人は、おそらくいとも簡単にボロを出すことだろう。
 それならば、多少は自分で戦っていれば、大部分蓮弥が担当しても、私の実績ですと言いやすいだろうと蓮弥は思ったのだ。

 「俺が半殺しにして、トドメだけ刺させてもいいんだけど……それにしたって手頃な魔物って一体なんなんだろうなぁ?」

 「エルフの、話なら、できますが……人の、お話、だと、分からない、です」

 「エルフだと、何を倒すと、凄いなぁって話になるんだ?」

 「マンティコア、ですね」

 マンティコアと言うのは森に住む魔物で、食欲が旺盛な存在だ。
 こうもりの皮膜のような翼に、サソリの毒針の付いた尻尾。
 人面のライオンの身体を持つと言われており、低級ながら魔術も扱う厄介さまで持っている。
 とにかく良く食べる魔物で、獣なりエルフなり、口に入る物なら適当に際限なく食べる魔物なので、害獣扱いで見つけ次第駆逐するようにエルフの間では決められていた。
 これがまた凶暴で手に負えない性格なので、エルフの間ではこのマンティコアを単独撃破すると言うことは非常に誉れ高い行為として称えられるのだとクロワールは説明した。
 エルフ語で。
 共通語での説明は無理だと、あっさり諦めたクロワールだったが、説明が終わった後で蓮弥に弱くではあるがアイアンクローを施されて涙目になる。

 「いきなりエルフ語でまくし立てるな、馬鹿者め」

 「酷い、です。レンヤ、さん……目に、星が、飛んでます」

 「時間経過で治るから心配するな。……しかし、リアリスにマンティコア倒させて、すごいなぁってなるかな……」

 そもそも見つかるんだろうか、と言う心配もある。
 エルフの国には大きな森がいくつもあるので、マンティコア自体はそこそこの頻度で遭遇する魔物らしいが、人族の大陸が同じ状況にあるとは言えない。
 エルフの国に比べればずっと森は少ないし、そういった危険な魔物は、見つけ次第冒険者が派遣されるか、国が討伐隊を送るのが普通なので、見つかりにくい森の奥の方等に潜んでいるからだ。

 「おや、にーちゃん、久しぶりだな。随分と美人さんつれてどーしたい?」

 不意にかけられた声に蓮弥は物思いから醒めて、視線を声の主に向ける。
 そこにいたのは、いかにも叩き上げと言った装備と風貌をした、中年のおっさん、ではなく冒険者であった。
 どこかで見た顔だな、と思った蓮弥はそれが以前、フォレストオクトパスの情報をくれた冒険者であることを思い出して軽く会釈する。
 蓮弥が会釈するより先に、クロワールがにっこり笑って頭を下げた。
 どうやら美人と言う単語に反応したらしい。

 「久しぶり。おっさんはあの森の討伐依頼に参加してなかったのか?」

 「しようとは思ったんだがよ。別件で仕事が入っちまってなぁ、仲間がそっち行くっていうもんだから、参加できなかったのさ。まぁ今にして思えば幸運だったな。あの依頼じゃ参加した奴らがほぼ全滅したって言うしよ」

 「そうか。そう言えばこの間の情報は助かった。確かにあのフォレストオクトパスは美味かったな」

 蓮弥の言葉に、中年の冒険者は少し驚いたような顔をする。

 「生き残ったのってお前だったのか。そりゃすげぇな」

 「幸運だったんだろうさ」

 「全くだなぁ。あの森ほとんど壊滅したって言うしよ。しかもそれが魔族の仕業なんじゃねーかって今、あの辺りに守備隊置いて砦建築してって大騒ぎみてーだしなぁ」

 魔族の仕業と言うことになってるのか、と蓮弥は初めて聞いた情報にちょっとだけ驚く。
 確かに、天災でしたでは説得力に欠けるようだし、蓮弥がやったことにされても、誰も信じないだろう。
 それならば、全部魔族のせい、としておいた方が、楽であるし、信じられやすいと言うことらしい。

 「それでにーちゃん、掲示板の前で難しい顔して一体……って隣の美人さんはエルフかよっ!?」

 ようやくクロワールの耳に気が付いたらしい冒険者が驚きで大きな声を上げた。
 クロワールの笑顔がちょっと困ったようなものへと変化し、蓮弥は一つ溜息をついて冒険者に言う。

 「あんまり大声出さないでやってくれ。怯えられたらかわいそうだろうが」

 「あ、ああ。すまねぇ。俺も長いことこの稼業やってるが、エルフなんて数えるくらいしか見たことがねぇもんでな。お嬢ちゃんも悪かった」

 「いえ、お気に、なさらず」

 「おい、にーちゃん。エルフが共通語しゃべったぞ……?」

 「目下、勉強中だ。心配するな、そのうち珍しさも薄れる」

 「信じられねぇ……明日、街の上から血の雨でも降るんじゃねぇだろうな……」

 どこか呆然と言い放つ冒険者に、蓮弥はダメ元で訪ねてみることにした。

 「ちょっとワケありで、短期間で、それなりの貴族を納得させられるような実績を上げたいって奴がいるんだが」

 「貴族ねぇ。あいつら、何かと難癖つけてきやがるから、納得させるったって難しいんじゃねぇの?」

 「そうだろう事は重々承知の上で。これを討伐すれば、貴族だって文句がつけられないだろうって魔物とかに心当たりはないか?」

 「そうさなぁ……」

 冒険者は自分のアゴに手を当てて暫く考えていたが、やがて考えがまとまったのか口を開く。

 「それだけの実績を作ろうってんなら。雑魚は話しにすらならねぇな。間違いねぇのは魔族を一匹シメちまえばこれ以上はねぇだろうが、あんなもんとヤりあってたら命がいくつあっても足りねぇしよ」

 「ふむ」

 「あとは<隠者の墳墓>がある岩山群の奥の方に生息してるらしいドラゴンくらいじゃねぇかな」

 「え? 隠者の墳墓近くって、そんな近くにドラゴンの住処があるのか?」

 隠者の墳墓がある岩山群は、一度蓮弥も行った事がある。
 距離にして20kmちょっとくらいしか街から離れていない場所だ。
 そんな近くにドラゴンの住処があって良いものなのだろうかと疑問に思う蓮弥だったが冒険者は首を左右に振って蓮弥の言葉を否定した。

 「にーちゃん、自分のいる町の周辺の地理くらいは覚えておくもんだぜ? ドラゴンの住処は岩山郡の奥の方って言ったろ? 岩山郡までは歩いて数時間ってトコだが、そこから岩山の間をさらに1日北に向かって進まねぇと到着しねぇよ。しかも途中にゃ魔物が出るから生半可なことじゃ到着しねぇし。あの辺は亜龍も出るしな」

 「亜龍?」

 「ワイバーンとか岩龍とかさ。ドラゴンよりは弱いが、それでも強敵であることには変わりねぇ」

 「そいつらでもそこそこの実績にはなるのか?」

 「そりゃ、一匹二匹じゃダメだが……数倒せばそれなりの箔は付くだろうぜ」

 「そっか。行けば大体ドラゴンに会える?」

 「まぁほぼ確実だが……にーちゃん、マジで行く気かよ?」

 呆れた顔をする冒険者に、蓮弥は笑顔で答えた。

 「あまり探さずに済む相手みたいだし、討伐無理そうなら、その亜龍辺りを数倒してお茶を濁すって手も使えそうだしな」

 「討伐、依頼は、無さそうです、が、素材で、一儲け、できそうですね」

 能天気なことを語る蓮弥に、あまり驚いていない様子のエルフ。
 普通、ドラゴンと言えば、それこそAランク以上の冒険者が徒党を組んでどうにかこうにか倒すような魔物なんだが、こいつら本当に分かっているんだろうか、と心配になる中年冒険者であった。五夜神 蔵秘雄精 強力催眠謎幻水

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