2014年12月11日星期四

漁夫の利

ソラが窓から差し込む月明かりの中でアイスプラントを観察していると、豚親父を先頭に裏切りメイドのミナンと護衛二名がノックも無しに入ってきた。中絶薬RU486

「ソラ、話がある」

 開口一番、豚親父がソラの前に立つ。

「何でしょうか?」
「宝くじなる物についてだ」

 豚親父はチラリと彼の後ろに控えるミナンに視線をやる。
 ミナンは注意していなければ分からないほどの一瞬だけ顔をしかめたが、恭しく一礼してさりげなく顔を伏せた。

「あのメイドから話は聞いた。詳しく説明してもらおうか」
「子供の戯れ言、単なる思いつきです」
「それを話せと言うのが分からんのかっ!?」

 がめつい豚が怒鳴る。儲け話を前にじらされるのが我慢できないのだ。
 ソラは首を竦ませ、怯えた振りをする。嘘泣きするのも忘れない。

「分かりました。宝くじの詳しいやり方を話します」
「それでいい、早くしろ」

 促されるままにソラはやり方を説明する。
 木の板に番号を彫り宝くじの札にして、出来るだけ多く、広い範囲に売る。
 その後、札の偽物が作られるより早く札に彫られた番号を全て書いた的を用意し、衆人環視の中で射抜く。
 矢が刺さった場所に書かれた番号を当選とし、一等から三等までの賞金を用意する。

「後、札の値段は安くすべきです」
「何故だ? 高く売った方が儲けが大きいだろう」

 ソラの値段設定に豚親父が不満を漏らす。

「安ければ平民も買えるので、結果的に多くの札を売れます。それでも売れ残るでしょうけど」

 理由には不満気ながら納得の様子を見せる豚親父。

「よし、早速準備させよう。おい、そこのメイド、お前が責任者だ。任せたぞ」

 そう言って豚親父達は部屋を後にした。
 ミナンはまさか企画運営を任されるとは考えなかったため、困った顔で天井を仰ぐ。そして、運営メンバーを都合すべく早足で廊下を歩いていった。
 一人残されたソラは話し疲れた喉を癒すべく金属製の水差しを持ち上げる。良く磨かれた表面には誰に隠すこともなく満面の笑みを浮かべる幼い顔が写っていた。

「踊れ、踊れ。俺の手のひらで……っと、これでは俺が悪者みたいじゃないか」

 翌日、豚親父と顔面凹凸婆は王都へ旅立った。
 裏切りメイドのミナンは十五日で準備を整え、札を売り出す。掛かりきりだったためにソラの側付きが変更されたが、経験のある者はミナンとメイド長しか居なかったために新人から選ぶことになった。
 懐柔策の一つだろう、側付きはソラ自身が直々に選べるそうで、アイスプラントを持ってきた新人メイドのラゼットを任命した。
 ずっと部屋に引きこもっていた彼に付き添い、ラゼットも部屋に居続ける。
 実際にはラゼットが部屋に居ないことをソラ以外に知る者はいない。
 宝くじの札が完売した事を喜び、愉悦を浮かべたミナンが部屋を訪ねて来た時にも何とかやり過ごした。
 そして、六日目、ミナンは街の中央にて当選番号を決める射的を行った。宝くじの札が完売したにも関わらず、見物人はそこまで多くなかったとラゼットに聞いたソラは悪戯が成功した子供のように無邪気に笑った。

「今日の昼までの報告は終わりです」
「お疲れ様、ラゼット。今日はもう楽にして良いよ」

 ソラが労うと、新人メイドから側付きメイドに昇進した茶髪娘は途端に椅子に座り、体を弛緩させた。巨人倍増

「足が筋肉痛ですよ」

 ふへぇ、と気の抜けた声を出してラゼットは足を伸ばす。

「お側付きになってもお給金は雀の涙ですし、下っ端の方が良かったかもです」
「そう? ボーナスを出す予定だったけど」
「マジですかっ? ソラ様万歳! お側付きも悪くないですね」

 調子のいい娘である。
 苦笑するソラにラゼットは嬉しそうに手を出してきた。

「今くれます?」
「後にしろ。ボーナスは踊り子をやり過ごしてからだ」

 廊下を歩く足音が聞こえてくる。程なくして扉をノックする音が聞こえてきた。

「入っていいぞ」

 ソラが入室の許可を出すと、少し乱暴に扉が開かれる。

「失礼します」

 ミナンがソラを見て勝ち誇った笑みを浮かべる。楽しそうで何より。
 ラゼットはミナンから視線を逸らした。ソラの共犯者として少しは良心の呵責がある。

「ソラ様、宝くじとはやはり素晴らしい商売ですね」
「おめでとう」

 札を一定の数売り上げれば理論上は必ず儲けが出る。気軽なギャンブルなので売りやすいのも強み。宝くじはそういう商売だ。

「今回は木材の価格が高騰していたので大した儲けは出ませんでしたが、次はもっと上手くやりますよ」

 ミナンが帳簿をソラに突きつける。
 ソラの予想通り、利益は大したことがない。全て計画通りに進んだ証拠である。

「ほどほどにしておけよ」

 ソラの忠告を負け惜しみと取ったミナンが嬉しそうに笑う。
 二歳児に勝ったのがよほど嬉しいのだろう。

「ふふん。それでは失礼します。次の宝くじを企画しているので」

 彼女が部屋を出て行った後、廊下から高笑いが聞こえてきた。

「ラゼット、踊り子について感想をどうぞ」

 ソラが水を向けると、ラゼットは廊下の方を気の毒そうに見つめた。

「報われない苦労とも知らないで、ご愁傷様ですね」
「あいつが頑張るほど俺が目立たなくなるし、助かるけどな」

 宝くじに人手が必要だったためか、ソラが懸念していた監視も付けられていない。

「それは置いといて、ボーナスをやろう。ラゼット、余った木材を全部くれてやる」
「やった。売りに行ってきますね」

 ガッツポーズをしたラゼットは小走りで部屋を出ていく。
 ソラは今回の騒動で大人二十人を1ヶ月養えるだけの金額を稼ぎ出した。金額を先に見ると冗談とも思える簡単なカラクリで。
 まず、ソラはミナンに木の板を百枚入手させていた。その後、彼女は裏切って独自に宝くじを始めるわけだが、豚親父と共に詳しいやり方を聞きに来た。
 ソラは詳しいやり方として“札は売れば売るほど儲かる”と吹き込んだ。札を売るためには材料が必要で、材料は薪にも使う木材だ。
 しかし、木材の価格は元から高くなっている。豚親父の政策により、税として納められる木材がなくなり、備蓄が少ないからだ。
 そして、宝くじの札は偽造防止の為、木材の種類を統一する必要がある。複数の商会を回って買い付けるのは間違いないし、注文もするだろう。
 何故なら利益を上げるには“多く、広い範囲に”売らなければならないから。
 元々が供給不足の木材を一度で大量に買い上げれば、値上がりするのは当たり前。
 値上がりすると分かっているなら後は簡単。先に木材を買い占めればいい。
 ソラはミナンに裏切られた後にラゼットと出会い、すぐさま商会から宝くじの札にする木材を買い占めるように指示を出した。五便宝
 ただし、現物取引ではなく先物取引で、だ。
 木材を低い値段で翌日に買い取る旨を証書にしたためる。それをあちこちの商会向けに行い、買い取り時間をずらしておく。
 商人達は宝くじについての情報を知らないので簡単に乗ってきた。
 ミナンが木材の購入を行えば、ただでさえ少ない木材の備蓄がすぐになくなる。
 後はソラが木材の買い取り証書を売りさばくだけだ。高騰した木材との差額は彼の懐に入り、高くなった木材をミナンが買い取る。
 ソラと各商会がミナンの足下を見ながら価格を釣り上げたのと同じ事だ。
 木材の証書を売りにくるラゼットを商人達は皆バカにしていた。
 商人からは、クラインセルト家が木材の価格を釣り上げ自ら高くなった木材を買ったように見えるから、バカだと思ったのだろう。内部分裂を起こしているとは夢にも思わない。
 なにしろ、ソラは二歳児だ。家督争いを起こす年齢ではない。

「あと半年か」

 豚親父達がクラインセルト領に戻ってくるまでのタイムリミット。彼らが帰ってきたならば悪政に拍車がかかる。
 余裕がある内に少しでも領民の生活を改善しておきたいソラにとっては短すぎる時間である。

「まずは弱者救済だな」

 またこき使うことになりそうだと、屋敷の門を駆け足で出ていく茶髪頭を見送るソラだった。

捨てる神あれば拾う神あり。

 ソラの両親が屋敷にいた十日間に九人の使用人が“処罰”された。ソラが庇っていなかったら倍の人数が消えていただろう。
 もちろん、物理的に。
 元から勤めていた使用人の中で今も屋敷で働いているのは八人だけだ。
 更に、領民への税も三割増えた。いくつかの村が離散したからというのが建前だが、徴収した税金はとある司教へ、出世祝い金という名の賄賂に使われる。
 それらの事を自慢するように話す両親と同席するソラは痛む頭と増幅する殺意をおさえつつ、食卓を囲んでいた。
 油に砂糖をまぶしたような味がする料理の数々が机に並べられている。見るだけで食欲が失せ、食べれば吐き気がこみ上げる。そんな食事だった。

「ソラ、食べないのか?」

 豚親父が皿をソラに差し出す。ぶよぶよの手で皿を持ち上げ、上下させていた。
 その皿をパイ投げの要領で豚親父の顔面へ投擲できればどれほど幸せか、と考えるソラの敵意に気づいた様子はない。

「あぁ、その……。気分が優れないので」
「なに? ソラはまた体調を崩したのか。食事のたびにそれだな」

 豚親父が顎だか首だかわからない部分をこすりつつ、料理人に目をやった。

「コック、お前が出す料理のせいではないのか?」

 剣呑なその視線にコックが身を震わせる。
 そもそも、この油まみれの料理は豚親父の注文なのだが、記憶から綺麗に消えているらしい。
 激しさを増した頭痛を我慢しながらソラは口を挟む。

「お父様、そのコックを処罰する前に一つ試してみてはいかがでしょう?」

 コックは一縷の希望を託した視線でソラを見た。二歳児に向ける視線では決してない。

「ソラ、何を試すというの?」

 顔面凸凹婆がソラに聞く。その母親面に苛つきを覚える彼の心中を知るものはいない。
 ──てめえ等はパチモンなんだよ、自覚しろ。
 彼にとって、クラインセルト家当主夫妻は領民を苦しめる敵でしかなくなっていた。

「そのコックがもっとも苦手とする料理を作らせてみるのです。それを食べて美味しくなければ不合格でいいでしょう」

 両親が口を開くより先に件の料理人を厨房へ追いやったソラに豚親父が不満そうな顔を向ける。

「ソラよ。わざわざ不味い物を出させる必要はなかろう。さっさと殺してしまえばよいのだ」
「お父様、何も食べるのが我々だとは言っておりません。そこのメイドに食べさせましょう。平民の舌でも不味いと感じるならばそれまで、美味しいと感じるならば我々の舌が肥えすぎているだけです。我々の舌が肥えているだけなのにコックを処罰しては懐が狭いと思われます」三便宝カプセル
「ふむ。一理あるな。平民の舌がどれほど貧しいか、試してみるのも一興か」

 豚親父と顔面凸凹婆がニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべる。
 二人の隙を見てソラは側付きメイドに目線で謝っておいた。
 コックの料理が運ばれてきて、メイドが「美味しい」と感想を述べたことに大笑いした豚親父達はやはり平民の味覚はおかしい等と好き放題に言って食堂を後にした。
 なし崩し的にコックへの処罰は見送られ、犠牲者を出さずに食事は終わった。
 豚親父達は翌朝に王都へ出発する。
 “病弱な跡継ぎ”ソラは領地でお留守番である。
 テーブルを片付け始めた使用人達を横目にソラも席を立ち、自室へと向かう。
 この十日間、様々なことがあった。
 何人かの若いメイドが豚親父に襲われそうになったり、領主軍が村一つを奴隷化する計画を立てたり、顔面凸凹婆が『美人税』なる物を起案したり……。
 ソラの心労が蓄積していく日々だった。
 片端から阻止したお陰で使用人達から信頼され始めたのだけが救いだ。一部には不気味だと避けられているが……。

「ソラ様、素晴らしい助け船でした」

 後ろを歩く側付きメイドのミナンがソラをほめる。

「君には悪いことしたね。あのコック、本当に苦手な料理をだすんだものなぁ」

 得意料理を出せとは言わないが、もう少し器用に立ち回ってほしいものだとソラは苦笑する。

「えぇ、大変な味がしました。それはそうと、先日の頼まれ物が届きました」
「そうか。よくやった」

 ミナンの報告にソラはニヤリと悪ぶった笑みを返した。二歳児が背伸びしているような微笑ましさがある。

「あんな草をどうなさるおつもりですか?」

 ミナンの質問には部屋に入るまで無言を通す。
 空気を読めるメイドは彼に付き合って無言のまま部屋に入り、扉を閉めた。

「さて、ミナンの質問に対する答えだけど……きっと信じられないと思う」

 ミナンに向き直り、ソラは切り出した。
 なにしろ、これから話すのは数百年先の知識を複合したものだ。
 顕微鏡すら存在しないこの世界では確かめることができない知識もベースにしている。
 怪訝な顔をするミナンを椅子に座らせ、彼は計画の説明に移った。

「──と、今の所はここまでが限界だ。あまり派手にやると豚……お父様が喜ぶだけだからな」

 説明を終えたソラが締めくくると、ミナンは知恵熱を出した頭に手で風を送りながらため息を吐いた。

「正直、よく分かりませんでした」

 ミナンが疲れた声で感想を述べる。

「そうだろうね。理解できる人がいたら王都でも引っ張りだこだよ」

 ソラの立てた計画はこうだ。
 木の板を加工して札を作り、それで宝くじを行って資金を集める。
 集めた資金で食料を買い付けつつ、浮浪児を集めて海辺の廃村に住まわせる。ついでに集めておいた古着を着せて恩を売っておく。
 海辺の廃村にて浮浪児達に漁を教える。既に漁師を確保してあるから問題なく行えるだろう。
 ここまでの計画はこの世界の人々でも理解できる。宝くじのやり方は教える必要があったが、それだけだ。
 宝くじの原型と言われる富くじは江戸時代にもあったから、さほど難しいシステムではない。蟻力神

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