遠く離れた地点で、青い身体の竜達が必死に息吹や魔術を大地に向けて放っている光景が見える。
大地に着弾した青い息吹や、水系統の魔術は当たった途端に水蒸気に変わり、勢い良く天に向かって吹き上がって行く。SEX DROPS
それでも一向に大地の熱は冷めない。
大地が放つ熱で、空を飛んでいる青い竜達もどことなくふらふらと元気がないように見えた。
燃えるものなど何一つ残っていないと言うのに、大地は熱を持ったまま冷めようとしないのだ。
蓮弥は傍らを見る。
そこに小山のような巨体を横たえているのは、蓮弥が叩き落した邪竜のうち、もっとも巨大で強力であった古竜だ。
落ちた場所が龍人族の都市の防壁ぎりぎり外だったので、自分が張った風の結界に飛ばされてどこかへ行ってしまったのではないかと心配していたのだが、余裕を持たせてやや大きめに結界を張ったおかげで、どこにも飛ばされること無くその巨体は残されていた。
その巨体に<操作>の魔術をかけて、蓮弥は都市から少し離れた場所へ移動させる。
そちらも辺りは何も無く、地面は黒くほんのりと暖かい土があるだけであった。
その土の上で、蓮弥はインベントリからナイフを取り出すとゆっくりと自分の魔力をナイフに染み渡らせるようにして強化していく。
<まぁなんと言うか……非常事態故の緊急措置と言い張るしかないんだが、レンヤ。同じことが起きないように君には私が持つ魔術知識の一部を譲り渡そう>
文字通り、なにもかもが終わった後で、かなり遠くまで避難していたエメドラが戻ってくるなり蓮弥を捕まえてそう言った。
蓮弥は無言で、ルビドラの背中の上から周囲の状況を見回す。
大地は、もう燃やすものなど何も残っていないはずなのに赤々と燃え上がっている。
その赤い光に照らされて、見渡す限り何も無くなってしまった大地の上にぽつんと一つだけ龍人族の都市が、防壁を半壊させた状態でなんとかその姿を残していた。
空は、爆発と炎上によって巻き上げられた煤で覆い尽くされ、太陽の光が地面まで届いていない。
<これ……私が? 一体何が……えぇえええええ?>
空中でホバリングしつつ、ルビドラは開いた口が塞がらない。
都市を攻撃していた魔物の軍勢は跡形も無く消えうせていた。
後に残ったのは溶けて赤熱化した大地のみ。
それ以外は本当に何も残っていない。
焼け野原と言う形容すら生ぬるい有様であった。
<龍人族の意見は真っ二つに分かれている。感謝するべきと抗議するべきの二択だ>
思念にたっぷりと溜息を混ぜて、エメドラが言う。
<君らが来なければ、命までも奪われていたのだろうから、抗議するのはどうかと私も思うんだが。これでは命以外は全て無くなったと言ってもいい惨状だ。現在竜族が必死に消火活動にあたっているが鎮火の目処は立っていない。……もうちょっと穏やかな解決方法は無かったのだろうか?>
「最善手だったと断言する」
きっぱりはっきりと断言した蓮弥であるが、わずかにその視線が泳いでいるのをシオンとエメドラは見逃さなかった。
炎の適性と言う点においては世界最高峰であろうルビドラが蓮弥から供給された膨大な魔力を使って放った炎の息吹は完膚なきまでに効果範囲内にある全てを焼き尽くしてしまった。
ルビドラの精神にもうちょっと強度があり、蓮弥が送り込む魔力の量がさらに多かったと仮定すると四大竜が放つ息吹のように地形が変わっていたかもしれないとは、一部始終を逃げながら見ていたエメドラの計算である。
誤算ではない。
そもそもが計算して行った行為ではないので、誤算であるわけがない。
とりあえず最大火力で焼き払えば、軍勢もろとも魔族とかも焼けて無くなるんじゃないだろうかと言う非常にアバウトな考えの下に行われた攻撃は、確かに結果としてはその通りの結果を導き出した。
こんな有様の中でしっかり命を繋いでいるような魔族が存在したのであれば、エメドラはその魔族を倒す手段が全く思いつかない。
その代わりに、龍人族側が受けた被害も大きい。
都市がなんとか形として残ったのは内部に勇者が、龍人族のアルベルトも混ぜて四人いたおかげだった。蒼蝿水
その四人が総がかりで防壁を芯にして都市全体に防御結界を設け、加えて蓮弥が直前に張った風の結界と合わせた防御力がなんとか爆風に耐え切ったのだ。
生きた心地がしなかった、とはレパードの感想である。
エメドラは何が起こるのか察知した時点で全力で逃走に移っていた為に被害を蒙らなかったのだが、遠くから見たルビドラの息吹の爆発は、この世の終わりにしか見えなかったそうだ。
背中に乗っていた面々は開いた口が塞がらず、ただエミル一人だけが爆笑していたらしい。
普通、竜族がその知識を人族に与える等と言うことは行われることが無いのだが、エメドラはその光景を見て蓮弥をこのままにしておくのは、魔王を倒す倒さない以前の問題として非常に危険であると判断し、自分が持っている魔術に関する知識の一部を蓮弥の頭に転写することにしたのである。
「拒否権は?」
<この惨状を見た上であると思うか?>
「俺、剣士なんだけど?」
<頼むから受け取ってくれ。何なら伏して懇願するから>
人間の脳みその容量には上限が存在するのだからそんな知識は必要ない、と思う蓮弥であったのだが泣きを入れられてしまえば無碍に断ることもできず、エメドラに請われるままにその知識を受け取った。
受け取って実践に移してみれば、その知識は非常に役立つものであることを蓮弥は知る。
魔術については勿論、魔力を使用した自己強化技術。
さらには物品に魔力を通して強化する術までエメドラは蓮弥に譲り渡したのだ。
単に自分の危険度が上がるだけではないかと蓮弥は思ったのだが、無自覚に力を行使されるよりはきちんと知った上で使われるほうが危険が少ないとエメドラは判断したらしい。
<自己強化については、既に無意識になのか行っているように見えるのだが、適当にやっていると身体を痛めるぞ。最悪、再起不能になる可能性もあるのだから技術として知っておいた方がいい>
そんなわけで竜族の魔術知識を獲得した蓮弥は、後始末等は他の人に丸投げして、戦闘中に叩き落した邪竜の回収に来たわけである。
戦闘で倒されてしまった竜族の遺体は、エメドラとルビドラによって回収されていった。
戦場ではなく街の中に落ちていた為に、焼かれたり飛ばされたりすることなく残っていたそれを、エミルが欲しがったりしたのだが、そちらには絶対に手をつけないようにと蓮弥は厳命している。
竜族には竜族の弔いがあるらしく、その遺体に手をつけることは冒涜だろうと考えたからだ。
代わりに邪竜の死体に関しては自分達の好きにさせろとエメドラに伝えてあり、こちらはすんなりと蓮弥の意見が通った。
エメドラ達も同胞の遺体はともかくとして、邪竜に関しては比較的どうでもいいと考えているらしい。
小さな邪竜はエミルが嬉々として解体し、素材と肉に分けて回収作業を行っていたが、古竜だけは蓮弥が所有権を主張し、その手に委ねられることになった。
炎の魔術で滅多打ちにしたせいで、鱗と皮に関しては素材としての価値はほとんど無くなってしまっている。
あちこち焼け焦げてしまっているそれを蓮弥は魔力で強化したナイフで手際よく切り裂く。
その下にある肉も表面は焦げてしまっていたが、内部に関してはそこそこに綺麗な肉が残っており、蓮弥はそれを適当に小さく切り取る。
身体の大きな動物の肉は赤い、と言うのが蓮弥の中の知識であったが、切り取った古竜の肉はそれほど赤身を帯びておらず、どちらかといえばピンク系統の色でしっとりと蓮弥の指に絡みついた。勃動力三体牛鞭
インベントリから取り出した薪で焚き火を作り、金串を用意した蓮弥は切り取った肉をそれに刺すと焚き火の傍らに突き刺して焼き始める。
あまり火を通すと固くなるかもしれないと、軽く炙って脂が溶け始めた辺りで火から外し、ぱらりと塩を振りかけて無造作にかぶりついた蓮弥は低い唸り声を上げた。
血抜きもしておらず、肉自体熟成もさせていないそれは食材としてはどうなんだろうと疑問に思うものだったのだが、口に入れた途端に香ばしい脂が喉へと滑り落ち、肉自体はしっかりとした噛み応えを歯に与えつつ、噛み締めるたびに芳醇な肉汁が溢れ出す。
わずかに感じる血の匂いと味も、肉の味自体を邪魔することなく、逆に野趣溢れる味と香りになって喉と鼻を刺激し、その存在感は胃に落ちて尚満足感となって蓮弥の感覚を刺激する。
「美味い……」
瞬く間に一串食べてしまった蓮弥は陶然と呟くと、すぐ我に返って古竜の解体作業に着手した。
かなり適当に焼いただけでもこれだけ美味い食材ならば、きちんと調理すればもっと美味いに違いない。
さらに、肉がこれだけ美味いのであれば内臓はさらに美味いかもしれない。
その上、骨からはきっと良い出汁が取れるだろうし、頭を開けば魔石と脳がある。
魔石はお金になるし、脳も調理方法によってはきっと美味しく食べられることだろう。
これは一片たりとて無駄にしてはいけない素材であると蓮弥は全能力を解体作業へ傾ける。
この世界において、全ての災厄の一端を担うとまで言われ忌避されている邪竜と言う存在が、蓮弥の認識の中で極上の食材として認識されてしまった瞬間であった。
<あの認識がこっちに向かない事を祈るばかりだわ>
とても疲れた思念を放つルビドラの傍らで、シオンが苦笑している。
二人の視線の先では、巨大な古竜の身体が蓮弥の手によってとんでもない速度で解体されていた。
邪竜と言う存在はルビドラにとってはどうでもいい存在であり、それが食材になろうが素材になろうが勝手にすれば、程度のものだったのだが同じ竜と言う存在である以上、実はお前らも美味しいんじゃないかと蓮弥が言い出すことだけが怖かった。
その場合、全力で逃げるしか選択肢が無いのだが、どうにも逃げ切れる気がしないルビドラである。
「大丈夫だろう。あれで蓮弥は仲間と認識した存在には優しい人だし」
ぐったりと身体を横たえているルビドラの首筋を、シオンは安心させるかのように撫でる。
その感触が心地よかったのか、ルビドラが小さく喉を鳴らした。
<仲間だと認識してくれてると良いのだけど>
「多分、大丈夫」
<不安になる返答ね、それ>
ルビドラが疲れ果てているのは、エメドラから説教を食らったせいだった。
原因の大半は蓮弥にあるとは言え、吐き出すときに分裂させて散らすとか、そもそもそうなる前に経路を切って魔力供給を止めるとか、手立ては色々あっただろうと怒られたのである。
巻き込まれた形のルビドラからしてみれば、非常に理不尽に感じられる話ではあったのだが、確かに注がれた魔力の量に混乱さえしなければ、多少被害を抑えることができたかもしれないと言う自覚はあったので、おとなしく説教され続けていたのだが、やはり精神的には疲れてしまう。福源春
<それで貴方達はこれからどうするの?>
「そうだなぁ……」
その辺りの話は勇者四人に加えて避難していた龍人族の長老やら立場のある者とクロワールやらローナやらカエデと言った各種族の者達が現在会議を行って話し合っている。
シオンはそう言ったお話し合いは自分には難しいから、と言って逃げてきていた。
その話を聞いたルビドラとしては、そんな理由で話し合いを逃げてくると言うのはどうなんだろうと思ってしまうのだが、さらに酷いのが蓮弥の逃げてきた理由だ。
興味が無いからそっちで適当に決めてくれ、と言うのが蓮弥が話し合いから逃げて来る時に言い残していった言葉である。
このいい加減さと言うか言い草が龍人族の、特に年配の龍人族の怒りを買いまくったらしいのだが、蓮弥は全く気にした様子が無い。
そもそも、蓮弥の立場と言うのは人族勇者のクルツの後見人、もしくは保護者と言うものであり、勇者がきちんと四人そろった現状においては、その場に居合わせなくてはならない理由が無い。
それでも、クルツ一人だけを残していくと何をしゃべりだすか分かったものではないので、お目付け役としてローナを残してきている。
とんだ貧乏くじですとローナには溜め息をつかれてしまっていたが。
「当たってるかどうか分からないけど、選択肢は二択だな」
<言ってみなさいよ。判定してあげるから>
「一つは、龍人族の領域の奪還を目指す。もう一つは龍人族のことはとりあえず脇に置いておくとして、勇者四人で魔王を倒す」
<元凶を潰せば、諸問題は解決するだろうってことね。それで貴方はどちらの選択肢が通ると思ってるのよ?>
「龍人族の領域奪還かなと」
<理由は?>
尋ねられてシオンはしばらく黙り込む。
どうやらなんと言うべきなのか一度頭の中で整理しているらしいと、ルビドラは首筋をなでられるがままにシオンが口を開くのを待った。
「確かに魔王を倒せれば、魔族も自分の領域に引っ込むのだろうが。そもそも、魔族の支配領域の中心部にあると言われてる魔王城まで勇者四人を届ける方法が無い。今までだと、四つの大陸から魔族の領域に総攻撃をかけて、可能な限り奥地に踏み込むと言うのが常套手段だったが……今回は難しいと思うんだ」
ルビドラは黙ってシオンの意見を頭の中で考える。
確かに、今まではシオンの言う通りの方法で魔王城まで近づき、そこからは勇者の力でもって無理矢理突破して魔王と戦うと言う方法が取られていた。
しかし、現状を考えてみるとまず龍人族はあっさりと支配領域のかなりの部分を魔族に奪われており、とてもではないが逆侵攻を行える力があるとは思えない。
人族の領域は、トライデン公国と言う戦力は健在ではあるのだが、クルツの一つ前の勇者の愚行により、最大勢力であった聖王国がほぼ壊滅してしまっていると言う難点を抱える。花痴
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