2014年8月22日星期五

ミュアとミミル、アヴォロスとの対面

「え? 騒いでる?」


 アヴォロスの耳に届いたのはキルツからの報告だった。


「みたいだぜ? どうすんだ?」


 キルツは面倒そうにボリボリと頭をかきながら言う。CROWN 3000


「まあ、騒いでるっつうより、あの銀髪の獣人ちゃんが自分が攫われた理由を説明してほしいと言ってるみてえだけどな」
「…………そう言えば彼女にはまだ説明してなかったね。でもやはり自分が攫われた理由が気になるようだね。ねえランコニス、キルツが言っていることは本当かな?」


 キルツの眉がピクリと動く。その確認方法だけでアヴォロスが全面的にキルツを信用していないことが分かる。


「あ、はい陛下。監視役の兵士から報告を受けて、私とキルツさんが話を聞きに行きました」
「ふぅん、大地から離れて、いよいよ不安にでもなったかな?」


 アヴォロスは顎に手をやりしばらく考えた後、ふとキルツに視線を向けた。


「ねえキルツ、兵士からの報告には、君が単独で彼女たちに会ったって聞いてるんだけど、それはどうして?」


 探るような目つきでキルツを鋭く射抜くアヴォロス。しかしキルツは飄々とした態度で肩を竦めて言う。


「そんなもん簡単だ。あの子たちが捕まったのは俺の情報のせいでしょうに。確かにお前には逆らえねえけど、ここには人としての心が残ってっからな」
「キ、キルツさん!」


 ランコニスがキルツの態度を改めるように慌てて叫ぶが、キルツはジッとアヴォロスを見つめているだけだ。


「ふぅん、つまり年端もいかない少女たちがここにいるのは自分のせいで心が痛んでいるということなのかな?」
「まあ、ざっくり言やそうだな」
「……何を話したのか言うんだ」


 アヴォロスが目を細めて冷たく言葉を放つ。するとキルツは舌打ちとともに、口が動き出す。ミュアたちと合い、話したことをアヴォロスに全て伝える。


(……不自然なところはない……か)


 キルツから聞いた限り、ほぼ一方的にキルツが謝罪を含めて短い間ミュアたちと話しただけだ。内容も別段気にする必要がないほどだ。


(若干気になるのは彼女たちが助けに来てくれることを信じていることだけど、それはまあ当然なことだしね)


 誰でも囚われの身になれば助けを願うのは当たり前である。


「それともう一つ」
「ん?」


 キルツがまだ続ける。


「もう一人の、ミミルも自分がこれから何をされるのか聞きたいとのことだ」
「……へぇ」


 キルツは全てを喋り終わったら舌打ちを鳴らしアヴォロスを睨みつける。しかしアヴォロスはそんな彼の態度に素知らぬふりをする。OB蛋白の繊型曲痩 Ⅲ


(それにしても……クク)


 アヴォロスはキルツを玉座から見下ろすと、


「自分にできるのは時間稼ぎだって? 恐らく誰かが助けに来てくれるまでの時間を稼ごうと思ってキルツは彼女たちに言ったみたいだけど残念、痺れを切らして動いたのは彼女たちの方だったようだね」
「…………」
「大人しく喚わめかず待っていればもう少し恐怖を感じずにいられたものを。どうやら自分たちが何のために、これから何をされるかそんなに知りたいなんてね。そうだね、良い機会だ。アレの準備も整う。話した後、彼女たちには絶望を感じてもらおうか」


 アヴォロスは悪魔のような笑みを浮かべるとキルツに向かって言葉を発する。


「残念だったね。時間稼ぎもできなくて」
「……ちっ」


 キルツの悔しそうな表情を見てアヴォロスは愉悦感が胸いっぱいに広がっていく。


「クク、彼女たちを使って、ヒイロにも絶望を見せてあげたいな早く……ククク」


 狂っている。アヴォロスを見た常人ならば誰もが感じるはずだ。しかしその場に居る黒衣の者たちはキルツとランコニス以外は平然と佇んでいる。


「さあ、二人をここに呼んでくれるかい?」

 《玉座の間》へ通されたミュアとミミル。二人の両手にはガッチリと重い手錠が嵌められてある。《化装術》も魔法を使用不可能にする手錠なのだ。


 ミュアとミミルは緊張した面持ちでゴクリと喉を鳴らす。そして確かめるように一歩ずつ優雅な感じで玉座に腰を落ち着かせているアヴォロスのところまで向かう。彼女たちの周りには兵士たちが囲っている。


 ミュアたちを見つめる多くの視線。玉座を挟んで左右には黒衣を身に纏った者たちが顔を突き合わせている。ミュアは目だけを動かして一人一人確認していく。そして全身を黒衣で身に纏い、顔もフードで覆っていて確認することができない人物を発見する。


(……あの人だ!)


 ミュアは再度喉を鳴らす。そして歩きながら微かに魔力を使う。福潤宝


「……? ねえ君、無駄だよ? 言ったでしょ? 君がお得意としてる《化装術》は使えないって。それにたとえ使えたとしてもこの状況、君たちが逃げおおせるわけがないと思うけど?」


 アヴォロスの言う通り周りは《マタル・デウス》の主力で囲まれている。仮に準備万端で《化装術》が使えたとしても、恐らく数秒ほどでミュアは殺されるだろう。


 だがしかし、ミュアが魔力を使ったのは《化装術》を使って逃げようと思ったからではない。そこには重要な役割が課せられていたからだ。


(ふぅ、良かったぁ。ヒイロさんの言う通り、相手は勘違いしてくれた)


 ミュアは表情には出さず心内でホッとしていた。それは隣にいるミミルも同様だったようで、若干顔を青ざめさせているが、ミュアが力強く頷くと、ミミルも安堵したように息を漏らす。


「さて、まずは君」


 アヴォロスがミュアを指差す。


「君にはまだ話してなかったね。どうして君を攫ってきたのかを」
「…………はい」
「ふぅん、力強い瞳だ。不安に揺れながらも太い信念が見える。君が送ってきた日々を考えれば驚愕すべき現在だね」
「や、やはりわたしが何者か知ってるんですね?」
「うん、君は『銀竜』。かつて三大獣人種と呼ばれ、今は絶滅したとされている伝説の獣人種。それが君だ」


 やはりとミュアは分かってはいたが再度認識できた。


「余はね、ずっと三大獣人種である『金狐』、『虹鴉』、そして『銀竜』を探していたんだ。この世界のどこかに、その血筋を引いた者たちがいると信じてね」
「ど、どうしてですか?」
「その力を求めてだよ」
「……!」
「君は自分が何者か理解しているかい? 『銀竜』……何故君の種族が三大獣人種と呼ばれ、そして今や滅んだとされているのか」
「そ、それは……」


 確かにミュアは何故『銀竜』という種族が、周りにいないのか気になっていた。そして父にも聞いたことがあった。だが父は苦笑を浮かべながらいつもはぐらかしていた。
 母親は幼い頃に病で亡くなっていたので、ミュアには父しかいなかった。周りは人間ばかりであり、自分たちが人間界に住んでいることは把握していた。


 何故獣人界ではないのか、それもまた父は教えてくれなかった。というよりも、もう少し大きくなったら全てを話すと言っていた。
 残念ながら大きくなる前に、父は獣人排斥派たちに殺されてしまって真実を確かめることはできなくなってしまった。VIVID XXL


 父の親友であるアノールドがミュアを引き取り、これまで育ててくれた。彼もまた獣人排斥派に追われる身でありながらも、父親代わりとして愛情を目一杯注いでくれている。


 アノールドにも『銀竜』について聞いてみたが、詳しいことは父にも聞いていなかったとのこと。だからミュアは、自分が伝説の種族だと言われてもピンとこなかったし、アヴォロスのいう力というものも強く実感したことはないのだ。


「三大獣人種にはね、他の獣人には持ち合わせていない特別な異能があるんだよ」
「い、異能?」
「そう、君はまだ覚醒していないみたいだけど……《獣覚》という言葉は聞いたことあるよね、獣人ならば」


 《獣覚》。それは己の中の獣の力を呼び覚ますこと。多くは満月の夜に発動する現象であり、その夜には全ての獣人は若干身体能力が向上したりする。
 またハーフの中で、獣人の血を引く者は、《獣覚》で暴走状態に陥ることがある。本来《獣覚》といっても、多少獣の力が強まるだけのものだとミュアは聞いたことがあり、暴走などは気をしっかりと持っていればしない。


 しかし心の安定さを失っている時に《獣覚》が起これば、姿形も獣のような姿に変化し、理性も失い戦闘本能に支配されてしまう。
 中には満月でもないのに、その時の状態を自由に作り出し、コントロールすることができる天才もいるということだが、そんなのは稀な例である。


 ミュアはアヴォロスに「知っています」と答えると、アヴォロスは小さく顎を引く。


「《獣覚》は獣人やハーフに若干の力を授ける月の恵み、とされてる」


 されてるということは違うのかとミュアはミミルと一緒に首を傾ける。


「月からは膨大な魔力がこの【イデア】に降り注いでいる。その魔力に当てられて、獣人は本能に刺激を受けて、本来持っている獣の本質を呼び覚ます。けどね、普通の獣人はその月の魔力を別の存在が邪魔するんだ」
「え? 別の存在?」
「そう、それが獣人の中に眠っている『精霊』だよ」
「あ……」
「ハーフが暴走し易いのは、内に秘められた『精霊』の力が弱いから。『精霊』の魔力と月の魔力は対極。だから反発し合い、中途半端なパワーアップしかしない」
「そ、それじゃ、もし『精霊』がいなければ……?」
「ククク、君の考えてる通りだよ。獣人は莫大な魔力を受け強くなれるだろうね。まあ、満月の夜限定になるだろうけどさ」
「…………」
「そうなってもまあ、膨大な力の制御ができずに暴走するだけだろうけどね。だから『精霊』が暴走にならないように月の魔力を弾いているんだよ、できるだけね」


 そんなことが獣人の身体の中で起きていることは初耳だった。だがもし彼が言うことが真実ならば、ハーフが暴走し易いことや、暴走したら激烈に強くなる理由に説明がつく。
 アヴォロスはゆっくりとミュアを指差す。挺三天


「だが例外もある。それが君たち三大獣人種だよ」

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