新学期も半分ほどが過ぎ、予想通りと言いますか生徒会の中で軋みが出てきます。
私が生徒会書記とは言え、やはりすんなり生徒会入りしたのが面白くなかったようで、1学年上の同じ爵位である侯爵家令息にて私と同じ生徒会書記の、カイル・バルグ=インザーギ=トルーク様から徐々に文句を言われてしまう事態になったのです。D9 催情剤
その内容は、要約すれば女は出しゃばるなと、実にこの世界の貴族の常識らしいご意見故に中々切り捨てるのも難しいのが現状ですね。
勿論私としましてはお聞き捨て出来る事ではなく、最初の方など即言い返してしまい、でもすぐにリリマージュ様にを筆頭にやんわりと窘められてしまいました。
そして、流石ランドーク家の教育は素晴らしいようですね、などとイヤミを口にしつつ調子に乗るカイル様のお姿に、ますますストレスが溜まる悪循環。
うう、カイル様の小憎たらしい勝ち誇った笑顔……、とっても悔しいです!
ですが、カイル様の言い分がこの世界では正しいのは間違いないのですよね。
何故か殿下こそ私のお味方をして下さいますが、リリマージュ様やディエル様は私に対してご注意なさって下さっていらっしゃいます。
これは勿論私の為を思っての事だとすぐに分かりますし、それでもイライラしている私が未熟者なだけでしょう。
「はぁ、憂鬱で仕方ありませんわ」
お昼の時間リリマージュ様とチェリアさん、そして殿下とご一緒しているのですけど。
最近はこんな言葉ばかり呟いてしまいます。
うぅ、これは本格的に悪循環に陥っているようですね。
勉学などにこそは逆に集中出来ていますが、リラックスする時間にリラックスしきれていないように感じます。
「それは仕方ないですわ、アメリアさん。
カイル様がおっしゃる事は、今の常識では当たり前の事ですし。
だからこそ、私はそんな常識を変えたいと思っているのですけど」
苦笑いを浮かべて口を開かれたリリマージュ様。
彼女こそ私より何倍も悔しい思いをなさって来た事でしょう、私も見習わないとですね。
「むぅ、私が良いと言っているのにな」
「そうですね、アメリア様のおっしゃる事は間違っていないと思います!」
不満そうに口になさる殿下とチェリアさん。
すると、リリマージュ様が表情を険しくなさいます。
「殿下、過ぎたるお言葉を失礼致します。
罰を与えるとおっしゃるのでしたら喜んで受けましょう。
ですが、それはアメリア様の為になりませんし、そう言う問題でもございません。
流石に浅はかすぎるお言葉かと愚考致します。
そして、チェリアさんもそれは浅慮が過ぎるかと思いますわ。
この場合責められるべきはアメリアさんであり、アメリアさんが間違っているのは確実ですから」
すっと、責めるような視線を私に向けられるリリマージュ様。
意図が分からない訳ではなく、すぐに言葉を発せられなかった自分に落胆しつつ頭を下げます。
「私が言うべきお言葉を代わりにおっしゃって頂き、誠にありがとうございます」
「いえ、私も言葉が過ぎました。
ですが、立派な淑女を目指すと言うのでしたら、出来て当たり前の事ですよ?
お気が強いのもほどほどになさいませ」
ピシャリと言われてしまい、その言葉を深く噛み締めます。
本当にリリマージュ様のおっしゃる通りで、勝気すぎる私の性格はもっと改善してしかるべきですね。
そもそも、リリマージュ様も本来は女性の地位向上へと尽力なさろうとされていらっしゃるお方。
このような事など口にしたい訳もないですのに、口にさせてしまった事に猛省せねば。
「忠告感謝する」
「大変申し訳ございませんでした」
むすっとしながらも口にする殿下と、顔色を悪くして頭を下げるチェリアさん。
お2人にも悪い事をしてしまいました。麻黄
ただ、殿下はともかくチェリアさんにはもっと私自身が言っていかねばなりませんね。
つい耳に聞きやすい言葉を甘受してしまっていましたが、それは私の目指す立派な淑女ではないですし。
リリマージュ様がおっしゃるように、私達はまだまだ子供で未熟な訳ですから、それこそもっと励まねばなりません。
「食事中に雰囲気を悪くする事を申し上げてすみませんでした。
さぁ、折角の食事が冷めてしまいますし、早く頂きましょう」
そう口になさるやパンっと手を叩かれて、重くなった雰囲気を払うようになさるリリマージュ様。
流石にそれで全てが晴れる訳ではありませんが、重々しい状態が好きな訳もなく私達もわざと笑みを浮かべ明るい話題を振ります。
本当にこの辺りも悪循環ですよね。
何とか解決するのが1番なのでしょうけど、先ずは私が対応を覚える事でしょうか。
こう考えてみれば、リリマージュ様とディエル様がいかに特殊だったか分かると言うものですね。
本来の気質に助けられた部分が大きいですし、何より場合によっては私は不敬罪に掛けられかねないような考えを抱いていましたからね。
こう言う部分は逆に前世の知識が足を引っ張っているのでしょう。
今世だけの事を考えれば、本当に異質すぎると分かります。
かと言って、今後も貴族である続ける以上は出来なければなりませんね。
もし仮に……、そう、仮に王妃になって殿下と共に革命に臨み達されたとしても、他国からの使者などを歓迎する場合は、結局それに合わせた作法が求められますからね。
女王が治める王国でこそ女性の社会進出は著しいそうですが、我が国を含めた他の国々はやはり男性社会でありますし。
我ランドーク家ですら、たまにとは言え他国の方をご招待する事はありますから。
本当に淑女への道は長く険しく、そして一筋縄では行かぬと言う事でしょう。
「アメリア嬢、ただただ黙って記録するだけなら補佐でも十分ではないのだろうか?
それならばいっそ補佐に1度降格なさってはいかがかな?」
イヤミったらしく口になさるカイル様。
ここ最近同じセリフばかり吐かれていらっしゃいますが、悔しいったらなんの。
私が口を開けば開くで、おぉ、流石ランドーク家の教育は独特ですねなんてイヤミをお口になさる癖に!
そう思ったのですが、リリマージュ様に視線を向けると厳しい顔付きで首を左右に小さく振られます。
「申し訳ございません、カイル様。
ご忠告痛み入ります」
リリマージュ様のお陰で怒りと悔しさに爆発しそうになるのを何とかこらえ、必死に平静を装って口にします。
……結局声が震えてしまいましたけど。
うわぁ、顔を上げたらニヤニヤと嬉しそうに私を見つめていらっしゃるではありませんか。
ぶっちゃけ気持ち悪いです。
「なんの、アメリア嬢の事を思っての事です。
殿下並びにディエル様お2人ともお優しすぎるようですから、不肖私目が代わりに役割を果たそうとしているのです。
あしからずにですよ」
「はい、心得ております」
ますます意地の悪い声色になるカイル様のお言葉に、頭を下げて返事をしつつスカートをキュッと強く握り締めます。
もー! 出来る事なら顔面に拳をめり込ませたいですわ!
出来たとしてもはしたなすぎてやりませんけど、そうつい思ってしまう程度には悔しさが心に溢れています。
その後も事あるごとに私を槍玉に挙げつつ、恩着せがましいお言葉を吐かれ続けるカイル様。老虎油
と、徐々に私の右肩が熱くなっている事に気が付きます。
こ、これは非常にマズイです、と言うか、マズイなんてレベルではすみません。
慌て出す私に当然訝しげな視線が集まります。
が、すぐに察して頂けたのでしょう、リリマージュ様が顔色を変えら口を開かれます。
「アメリアさん、ご気分が悪いようでしたら、今日のところは一先ずご退席して頂いて構いませんわ」
「おや? 流石リリマージュ様。
たかがトルーク家の跡取りの私はともかく、殿下やディエル様を差し置くだなんて。
お見事ですね」
あーもう、黙って下さいカイル様!
貴方のようなわからんちんを相手にしている暇はございませんの!
と怒鳴りそうでしたが、それどころではないのもあり何とかグッと堪えます。
なんなんですかこの国の常識は!
本当に腹が立ちますって、ああ、ディア様、お願いですから爆発なさらないで下さいね。
「これはカイル様、ファンロック家令嬢の私とした事が、大変申し訳ございませんでした」
流石リリマージュ様と言うべきでしょうか、多分は頭に来られたでしょうに本当に申し訳無さそうな表情と声色でカイル様に返事をなさいます。
すると慌て出すカイル様。
……このお方博識で頭が良いとうかがっておりましたが、本当は馬鹿なのではないでしょうか?
先に家名を名乗りだし、家のメンツまでを持ちかけようとしたのは貴方でしょうに。
ああ、そうか、私が慌てている様子を見ていの1番に私が噛み付くと思ったのでしょうか。
実際は当然違うのですが、傍から見ると我慢をする限界の様にも見えるのかもしれません。
とは言え、ディア様の件がなければ怒鳴っていたくらいに私が短気なのは、最早間違いないですし。
これは不幸中の幸いと言っても良いかもしれませんね。
「お2人ともそのくらいにしましょう。
殿下、どうかアメリア嬢の退室の許可を出して頂けませんか?」
収拾がつかなくなりそうな所に、悲しげな声色で口になさるディエル様。
はい、大変申し訳ございませんでした。
リリマージュ様の応援とカイル様を内心で罵るのに夢中で、視界には入っておりましたが意識が向いておりませんでした。
殿下が渋いお顔をなさっていたのは、何故か気付いておりましたけど。
あまりにヒートアップし過ぎていた事に反省しつつも、ディエル様の見事な対応に尊敬の念を抱きます。
「そうだな、大事にするのだぞ」
「温かいお言葉、感謝の極みでございます」
私へ視線を向けると、本当に心配した様子の殿下に胸が締め付けられます。
大変申し訳ございません、私は大丈夫なのですが、ディア様が大変な事になっていると言うか、大変な事をしようとしていらっしゃるのです。
御礼の言葉を言いつつ、内心でそう声を大にした後に最低限の礼儀だけを守って生徒会室を後にします。威哥十鞭王
ふと視線を感じてカイル様を見れば、勝ち誇ったお顔で私を見つめていらっしゃいました。
おのれぇ、いずれ必ず目に物言わせてあげますからね!
売られた喧嘩、淑女らしいとからしからぬとか関係なく、私の信条として是非買ってあげます!
勿論、はしたない真似で同レベルにやり返す真似はするつもりはございませんが、いずれグウの音も言わせられないほどお返し致しますね!
どうぞお覚悟を!
足早に自室を目指しつつ、内心でそう叫びます。
負け犬の遠吠えで終わったり、泣き寝入りなんて私は絶対しませんからね!
『ああもう、ムカつくムカつくムカつく!
人間なぞ滅ぼしてくれようかしら』
「ディア様、それでは私も滅んでしまいます」
『……、それは当然無しだけど、あーもー。
私相当頭に来ていますよ!』
「ディア様、私にだけそうやって喋られるのはまだ良いのですが、お願いですから部屋に戻るまでお姿を晒されるのはご辛抱を。
私だって頭に来ていますから、部屋で一緒に文句を言ってストレスを発散しましょう」
『そうね! ああもう、ほんっっっとうに悔しいったらないわ。
アメリアが困る事にならないならすぐに潰してやるのに。
あーもー、腹が立つ』
徐々にヒートアップしていく私達。
時折り他の生徒と擦れ違いましたが、最低限の挨拶はしましたし良いでしょう。
私の独り言も、これだけ不機嫌さが前面に出ていれば詮索しようとはしないはずです。
まぁ、カイル様へと情報は回って、次お会いした時にでもネチネチと言われてしまうでしょうけど。
ああ、腹立たしいですわ!
つまり、まだここで淑女らしい対応を表面だけでも取れるほど、私は成熟はしていないと言う事でしょう。
それについては要精進ですね。
そのまま怒りに任せて自室の扉を、はしたなくも侍女に任せる事なく開けます。
「お帰りなさいませ、アメリア様。
お茶のご準備は整っております」
「アメリア様、どうぞ私目に思いを吐き出されて下さいませ」
開けて中に入るや、優しいナタリーとチェリアさんの言葉といたわりに満ちた表情に迎えられ、ふと張り詰めていた何かが切れたような感覚がして、両目が一気に熱くなってきます。
あら? 何故か視界がとても歪んでいますね。
ディア様が大丈夫? と私に声を掛けながら姿を現されていらっしゃるようですが、歪んでいるせいで上手く見えません。田七人参
本当に、何が起こったのでしょう?
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