バレンタインデー。
それは女の子にとって男の子にチョコレートを渡す日。
チョコを渡す行為、それに込められた気持ち。田七人参
その想いをチョコに託す。
だから、バレンタインデーは特別の日。
ちなみにバレンタインデーにチョコを渡す習慣は国々によって違うらしい。
製菓メーカーの陰謀という奴に限って、チョコレートをもらえずひがんでいる。
などというどうでもいい話だったが、ここからが重要な話だ。
バレンタインデーとは女の子にとっては想いを託すイベント。
しかし、男にとっては戦いの日でもある。
翌日の男たちの会話。
『お前、バレンタインデーでチョコいくつもらった?』
チョコの数が多ければ多いほど、そいつは人気者だという優越に浸れる。
見栄をはって10個とか言ってる奴ほど、実は母親からの1個だけという事が多い。
嘘と真実。
そう、バレンタインデーは男にとってプライドの勝負なのだ。
「おお、これは……」
その日、俺はリビングのテーブルの上に置かれた小さな箱を見つけた。
そう、それは紛れもないチョコレートの箱。
俺は辺りを見渡して誰もいないのを確認する。
「……チョコレートか」
俺はそれを手に取って調べ始める。
包装紙は解かれた後なのか、中身は高級チョコレートだと分かる。
この時期限定のチョコレート。
これは妹のものか、そう判断した俺はそれを机に戻す。
妹は中学生、お小遣いも少ないはず。
それなのにこれだけのモノを買うとなると結構気合が入っている。
相手は誰だ、誰なんだ。
彼女に恋人はいない、好きな男の子の話も聞かない。
ということは、もしかして俺に?
普段は冷たいくせにこういう時にしか愛を示すことができない。
『いつも素直になれなくてごめんね、お兄ちゃん』
そう言って差し出されるチョコレート。
『わかってよぉ。私、お兄ちゃんが大好きなの』
妹の不器用な愛情、お兄ちゃんはいつでも受け取ってあげるぞ。威哥十鞭王
「ふふふ……」
俺が自分でも不気味に笑みを浮かべていると、
「……その笑い方、普通に気持ち悪いです」
妹が自分の部屋から出てきたのか、リビングにやってきた。
俺の前にチョコレートがあるのを確認すると、
「ああ、ここにあったんだ。探してました」
それを手に取ると彼女はそのまま部屋に戻ろうとする。
「って、ちょっと待って」
「はい?どうかしましたか?」
妹を止める俺、流れ的に今おかしかったよね。
彼女は微妙に嫌そうな顔をしながら、
「話があるなら早くしてください。私も暇ではないので」
「お兄ちゃんは家族の会話が足りないと感じています」
「気のせいです。十分足りていますから。もういいですか?」
なぜかたった一言で今の俺達、兄と妹の関係を明白にした気がする。
こういう些細なすれ違いが、やがて大きな家族崩壊へと繋がる。
いけない、こういう展開は非常にいけない。
と、本題からずれてしまったな。
俺は彼女に椅子に座るように告げると、渋々彼女は席に着く。
「用は何ですか?」
「今日は何の日でしょう」
「2月14日。バレンタインデーですね。もういいです?」
「待って。お願いだから、少し話をしてください」
俺は彼女に紅茶を入れて、必死の足止めを行う。
紅茶とケーキをさしだすと妹もようやく「帰る」といわなくなった。
将来は執事にでもなれそうな手際のよさ。
自分でも彼女に尽くすのに慣れてきたのが少し悲しい。
「今日はバレンタインデー。そして、キミの手にあるのはチョコレート。さぁ、何かお兄ちゃんに言うことはないか」
「もしかして、チョコレートが欲しいんですか」老虎油
「イエス。というわけで、それください」
「寝言は寝ていってください。これは私のチョコレートであって、お兄さんのために買ってきたわけじゃないです。当たり前でしょう。どうしてこんな高いチョコレートをお兄さんに買い与えなきゃいけないんですか」
一気にまくし立てるような発言に俺も少なからずショックを受ける。
「妹に質問がある。自分用にチョコレート買ったのか?」
「そうです。最近はそういう女の子も多いんです。義理チョコとかそういうのも、最近は少ないらしいですよ。私は元から誰かにあげるつもりはないんですけど、自分用に欲しくて買いにいきました。美味しそうでしょう」
さりげに俺にチョコをあげるつもりがない宣言。
『お兄ちゃん。私の愛を形にしてみました』
ハート型のチョコを差し出す妹、なんていう男の甘い妄想が砕かれていく。
ああ、俺はもうダメだ。
愛が、俺には愛が足りない。
呆然としていた俺に妹は大きなため息をひとつつきながら、
「もう。ホントにダメな人ですね」
「すいません。期待していた俺が悪いんです。彼女がいないから、唯一の希望、妹がくれるのを期待していたんです。俺は本当に負け犬ですね。生きていてすいません」
「あ、あの……そんなに落ち込まないでください」
さすがに哀れと感じたのか、珍しく妹が優しい言葉をかける。
「気にしないでくれ、妹よ。お兄ちゃんは明日、友人達に誰一人からもチョコレートをもらえなかったと笑われるだけだから」
「チョコレートの数が問題なんですか。バレンタインは気持ちを贈るものでしょう」
ハッ、俺としたことが肝心なことを忘れていた。
そう、バレンタインデーに与えるのはチョコではなく愛。
俺としたことが物欲などに目が向き、物事の本質を忘れてしまうなんて。
「まぁ、そこまで落ち込まれると可哀相ですからこれをあげます」
妹はキッチンから1つの箱をもってきて、俺に差し出す。麻黄
俺がその箱を覗き込むとその中に入ってるのは甘い匂いのするチョコレート。
「こんなのでもお兄さんですから。家族ですから、義理でもないですし」
「うぅ、妹。お兄ちゃんは今、感激しています。ありがとう。本当にありがとう」
感動しながら、妹の手を握ると彼女は嫌がる素振りを見せながら、
「わ、わかりましたから。そう近づかないでください。ホント、ダメな人ですね」
妹は恥ずかしがるように苦笑しながら、部屋に戻っていく。
なんだかんだ言いながら用意してくれている妹の優しさ。
態度に出せずとも俺のことが好きなんだな、可愛いやつめ。
「これはまさか手作りのチョコ?」
少しだけ形が悪いのも愛嬌、手作りというのが一番のポイントだ。
妹の真っ直ぐな愛を前に誰が気にするものか。
俺は妹の愛情をたっぷりと感じながらチョコレートを口にした。
「……なぜ、愛とは辛い(からい)のだろう」
口いっぱいに広がるのは”甘さ”ではなく”辛さ”。
妹の手作りチョコレートはなぜか唐辛子の味がした。
そういえば、あの子は料理が超がつくほど下手だったなぁ。
お約束の展開だけに涙が出た。D9 催情剤
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