2015年5月1日星期五

やっと来たのか

「護衛は連れていくさ」

「エルヴィン。わかっているな?」

「はい」

 モーリッツは、エルに確実に護衛を行うようにと念を押していた。
 今はカルラにお熱で普段はボケボケのエルであったが、仕事を忘れるほどまでは行っていなかったようだ。RUSH PUSH 芳香劑

「ところで、この招待状なのですが……」

 俺から受け取った招待状を眺めていたモーリッツは、ある重要な点に気が付いていた。

「差出人が、フィリップ殿になっています」

「えーーーと。つまり……」

「明日には、クリストフ殿から招待状が来るのでは?」

「だよなぁ……。二日連続はキツいわ……」

 せめて一緒に招待してくれよと、俺は心の中で二人の後継者候補達を呪うのであった。



「ようこそおいでくださいました」

「遠慮なくご馳走になりましょう」

 その日の夕方、俺はブロワ家主催の晩餐会に出席すべく出かけていた。
 ブライヒレーダー辺境伯にその旨を伝え、敵陣へと乗り込むのは俺とエルの他に、モーリッツが指名した四名の護衛達。
 あとは、女性もいた方が良いであろうと、同じく護衛役も兼ねてルイーゼも参加している。

 彼女なら、もし何かがあっても多少の敵なら余裕で打ち倒すであろうからだ。

『それにさ。エリーゼは、危険だと思う』

 俺への毒殺は無いはずだが、エリーゼには一服盛る可能性があったからだ。
 毒殺が目的ではなく、未来の正妻であるエリーゼが子供を産めないように毒を密かに盛る。

 滅多な事では手に入らないのだが、そういう毒薬は実際に存在するらしい。
 万が一の可能性も考えて、今回はルイーゼが参加していたのだ。

『ボクなら、ある程度の毒薬は感知できるし』

『何その能力』

 まるで、某世紀末救世主のようだ。

『武芸をある程度極めると、感覚が鋭くなるんだよ』

 全てではないが、かなりの確率で食事などに含まれる毒は感知可能らしい。

『報告の魔法みたいな物か』

『二人で気を付ければ、毒を食べさせられる事もないでしょう。ねえ、カルラ』

『フィリップ兄様がそこまでしない事を祈ります』

 若干顔を引き攣らせているカルラを置いて、俺達はフィリップ主催の晩餐の席に参加する。
 ブロワ家が設営した小規模な陣地は、対立する二人のために二つの大型テントが張られていた。
 俺達が入らなかった方の大型テントには、次男のクリストフがいるのであろう。

「陣地なので、大した物は出せませんが」

 状況が状況なので、フィリップは二十歳も年下の俺に丁寧な口調で対応していた。

「普段は冒険者もしておりますので、お気になさらずに」

「貴殿の実力は、良く理解しているつもりだ」

 ブロワ家の長男フィリップは、身長が百八十五センチほどの良く鍛えられた引き締まった体の持ち主であった。魔鬼天使性欲粉(Muira Puama)強力催情
 軍事的才能に長けるらしいが、俺達はブロワ軍の失態を目の前で見ているので、その話を鵜呑みにするわけにもいかない。

 見た感じは、サッパリとした人であった。
 今回の失態が無ければ、普通に付き合えたかもしれない。
 エドガー軍務卿や、導師を含むアームストロング一族と比べると『濃い』人ではないからだ。

『フィリップか? あいつは、優れた将軍候補だぞ』

 晩餐の前にエドガー軍務卿から魔導携帯通信機経由で情報を仕入れたのだが、彼の口からフィリップの悪口はあまり出てこなかった。

『ただ、領主となるとなぁ……』

 軍系の法衣貴族としてなら彼はとても上手くやれるそうだが、領地を統治するのは難しい。

 本人もそれは重々承知しているのだが、自分を次期領主にと望む外戚や家臣達の前で言うわけにはいかないので、表面上は異母弟と争っている風に見せるしかない。

 それが真相なのではないかと、エドガー軍務卿は推察していた。

『それで、あの大事件ですか?』

『アレは、コドウィンが焦ってバカやらかしたんだろうな』

 コドウィンとは、最初の裁定の時に責任者になっていた初老の重臣の事であった。
 従士長で、娘がフィリップの正妻なのだそうだ。

『外戚として、ブロワ辺境伯家で権勢を振るうですか?』

『大貴族家の重臣にはありがちな夢だよな。それどころか、今の職を失いかねない大失敗を犯して、それを何とか誤魔化そうとしたんだろうな』

 それで、百名近い死者を出していれば意味が無い。
 いくら外戚でも、あの大失態では彼のキャリアはここで終了なわけだし、今は捕虜になっている。
 ブロワ家に戻れば処分されるであろうが、こちらがそれをどうこう言うつもりはなかった。

『王都にいると、俺が積極的に仲介に入れとか無理を言うバカがいて困るよな。ここで、俺がフィリップを手助けなんてしたら総スカンだっての』

 領主になれなくて領地を出たとかなら再就職先の世話などで力を貸すが、この状況で下手に介入などしたら、自分にまで火の粉が降りかかってしまうからだ。

『デカい和解金になると思うが、払うしかないだろう。最悪、資産整理命令もあり得るだろうな。どうせ潰せないんだから、素直に受け入れるしかない』

 『資産整理命令』とは、簡単に言えば一度破産してしまう事である。
 負債が著しいが、王国としても潰すわけにはいかない貴族家に第三者の管財人、この場合は王国から派遣される財務系の法衣貴族を入れ、ある程度借金が消えるまでは予算の執行などに大きな制限がかかるのだ。

 この制度がある理由は、いきなり大物貴族が消えると現地が混乱するからである。
 甘いような気もするが、『資産整理命令』を受けたその地方の大物貴族など、ただの王国の飼い犬でしかなくなる。

 それに、これが適用されるという事は、『お前は、領主として無能だ』と言われたに等しいのだから。

『次期領主の座は、クリストフに譲るしかないだろう。勝手に自爆したんだから。義父である家臣の暴走にしても、それを抑えられなかった時点で同罪だ。俺が引き受けて、面倒見るのが一番良い手なんだがなぁ……』

 ただ、その手だとフィリップは良いのだが、他の彼を支持してきた家臣達は最悪失業の危機に見舞われるわけで、それを口にしようものなら明日にはフィリップの息子を『摘孫なので』と後継者に立てて騒がない保障はないとエドガー軍務卿は思っているようだ。

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 ブロワ辺境伯家を潰して、そこを直轄地にするなり、他の貴族を転封するにしても暫くは混乱が避けられない。
 利益どころか持ち出しの方が多いはずなので、中央の大物法衣貴族ほど実は取り潰しが嫌だったりする。

 これが小物なら、躊躇無く取り潰しなのであろうが。
 日本で言うと、○京電力や○イエーは簡単に潰せないのと同じ理屈であろう。

『エドガー軍務卿は、領地貴族になりたいとか?』

『ないよ。統治できない』

 侯爵と辺境伯。
 呼び方は違うが、同じ階位を持つはずなのに法衣貴族しかいない侯爵の方が、財力も抱えている家臣の数でも負けている。
 なので転封を命じられても、統治できるはずがないのだ。

 むしろ、土着化した元家臣や兵士達に反抗されでもしたら、余計に混乱が広がる可能性があった。

『(物語みたいに、主人公がいきなり大きな領地とか下賜されても無理だよな)』

 うちだって広大な未開地の開発なので、常に人材不足で困っているのだから。

『和解金が高くて嫌とか言うのなら、鉱山とか、税収とか差し押さえてしまえ』

『強硬な意見ですね』

『向こうが完全に悪いからな。俺達はある程度の規模のブロワ辺境伯家が残って、東部を統括してくれれば良いわけだ。多少の縮小と負債には文句は言わないよ』

 こんな話をしたのだが、実はエドガー軍務卿からフィリップ本人に言わないで欲しいと言われていた。
 彼一人だけの問題ならとっとと継承権を放棄して終了だが、家臣達が絡んでいるので、下手な外部からの誘導は命取りになってしまうからだ。

「さあ。こちらの席にどうぞ」

 フィリップに勧められるまま、俺は準備されていたテーブル席の上座に座り、その隣に妻役としてルイーゼが座る。
 エルは、俺のすぐ斜め後ろに立って刺客などに警戒していたし、他の護衛達も同じであった。

 このくらいの警戒は、まだ俺達は裁定案すら結んでいない敵同士なので当然とも言えた。

「まずは、乾杯といきましょう」

 軍系な人なので、ノリが体育系なのかもしれない。
 早速ワインで乾杯してから、コース料理のオードブルからスタートする。
 料理の質などは、野営をしている割には素晴らしい物が出ていた。

 さすがは、東方を統括する『地方の雄』と言った感じであろうか。

「東部でも噂は聞いていましたよ。竜を二匹も倒した素晴らしい魔法使いであったと」

 交友目的の晩餐会なので今回の戦争の話をするわけにもいかず、話は俺の竜退治の話などに移行していた。
 それと、あの貴族なら一度は出ないといけない武芸大会などの話もだ。

「私は、予選五回戦で負けました。貴族の息子にしてはマシというべきですか」

 ワインを飲み、次々と出て来るコース料理を食べながら適当に話を続けていく。
 だが、やはり今回の戦争の話はしてはいけないので、俺は何のためにこの場に居るのかと疑問に思ってしまう。蒼蝿水(FLY D5原液)

 ルイーゼは警戒をしながらも、その小柄な体に似合わず良く食べているし、エル達も周囲の警戒を続けたままだ。
 ほぼ100%毒殺や暗殺の可能性は無かったが、仕事なのでこれは仕方がない。

 晩餐はデザートまで終了し、食後にお茶などを飲みながら話をしていると、やはりあの話題が出てくる。

「バウマイスター伯爵殿は、うちのカルラを妻にするつもりはないのかな?」

 やはり、カルラを俺の妻に押し込もうとしているようだ。

「この状況ではブライヒレーダー辺境伯側からの反発が強いでしょうし、まず不可能だと……」

 未開地開発の利権の分け前などで、また戦争になりかねない。
 下手をすると、ブライヒレーダー辺境伯からの妨害もあり得る。
 今は俺との関係は良好だが、彼にだって退けない部分があるのだから。

「考えてみてくれないかな?」

 強引に押し込もうとすれば問題になるが、ちょうど今カルラはバウマイスター伯爵家の捕虜となっている。
 扱いはお客さん準拠であったが、どうにか俺に見初められてとか考えているのかもしれない。

「(まさか、それが目的で交渉を伸ばしていないよな?)」

 晩餐は終わり、俺達は自分の陣地へと戻る。
 そして翌日、やはり今度はクリストフ主催の晩餐に招待されていた。

「本当に仲が悪いんだな。普通は一回で済ますだろうに……」

 昨日に続き俺の護衛を担当するエルが、他の護衛達と一緒に溜息をついていた。

「今日は、誰が行く?」

「勿論、ボクはパスね」

 まだ結婚はしていないが、婚約はしているのでまた婚約者を同伴しないといけないのだが、ルイーゼは昨日出席したので一番先に断っていた。

「じゃあ、イーナか?」

「いいけど。あまり料理の味がわからないでしょうね……」

 ルイーゼはある意味天才なので、大物貴族家の晩餐に呼ばれても、警戒を続けながらデザートのお替りをするような図太さがある。
 ところがイーナは真面目なので、こういう席では極端に緊張してしまうのだ。

「何か、嫌そうだな」

「正直ね……」

「俺も面倒なんだよなぁ……。礼儀的に出ないと駄目だから、仕方なく出ているけど」

 美味しい食事ならいつでも食べられるし、どうせまたカルラを妻にして欲しいと頼まれるだけなので、俺だって食傷気味なのだ。超強女性用媚薬 Great tender

「ヴィルマは?」

「うちのご飯の方が美味しいからいい」

「さいですか……」

 ブロワ家も大貴族なので良い食事は出るのだが、俺達と交流がないので醤油、味噌、マヨネーズ、チョコレートなどの新食材や、新しい調理法などに無縁だったりする。

 なので、食事の内容が王都で出席した貴族主催のパーティーメニューと大差なくて、物凄く食べたいとか思わないのだ。

「エリーゼは?」

「私は、今回は遠慮いたします」

 普段から未来の正妻であるエリーゼは、俺と同伴することが多い。
 だから遠慮するのと、実はもう一つ理由がある。

「エリーゼを連れて行くと、エリーゼが説得されるしね」

 カルラを俺と結婚させるため、エリーゼの方に説得や工作が及ぶ可能性が高いのだ。
 将来は、彼女がバイマイスター家の奥を管理するのだから。

「私が行くと、余計に面倒な事になる可能性が……」

「さて、どうしたものか……」

 勿論もう一人候補はいて、しかも彼女の様子を伺うと物凄く出席したそうな表情を向けてくる。
 何が楽しくてあんな晩餐に出たいのかは知らないが、きっと彼女なりの楽しみがあるのであろう。

「あとは……」

「仕方がありませんわね。ここは、私が……」

「ルイーゼ、二日連続で悪いけど」

「どうして私を見て、またルイーゼさんなのですか!」

 理由は簡単で、カタリーナがあまりに行きたそうなので、ついからかってしまったのだ。

「冗談だよ。でも、そんなに出たいのか?」

「私、そういうパーティーや晩餐とは無縁で……」

 知らないがゆえに、物凄く憧れているらしい。

「じゃあ、カタリーナに頼もうかな」

「任せてくださいな。私の優雅さで、晩餐会を成功させましょう」

 何か物凄く勘違いをしているかもしれないが、ただ飯を食って来るだけなので俺はあまり気にしない事にする。
 そして、その日の夕方。

 そろそろ時間なので、ブロワ家の陣地へと出かける事にする。

「ヴェンデリンさん。お待たせしました」

「おい……」

 何となく嫌な予感はしたのだが、カタリーナは恐ろしく気合を入れてめかし込んでいた。
 シルクを惜しげもなく使用したフリフリが一杯ついた真っ赤なドレスに、普段の魔晶石ではなく本物の宝石が沢山ついたカチューシャ、指輪などのアクセサリー類も宝石の物に、ヒールも踵の高い物に変えていた。美人豹

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